カイコの絹糸の主成分であるフィブロインの時期特異的かつ部位特異的な転写を制御する因子であるFMBP-1から発見されたDNA結合ドメインであるSTPRドメインは、9塩基対からなるATリッチの特異的配列に結合する。このドメインは、23残基の極めて配列相同性の高いリピート配列が4回繰り返した非常に特徴的なタンデムリピート構造を有しており、代表者の研究成果から、遊離状態では揺らぎの大きな天然変性構造をとるにもかかわらず、DNA結合状態ではα-helixリッチな構造を形成することが明らかになった。そこで、このDNA結合ドメインのDNAとの相互作用に伴う立体構造形成に関する、動的認識メカニズムを明らかにすることが本研究の目的である。 まず、遊離状態のSTPRドメインのNMRスペクトルは天然変性蛋白質に特徴的なものであるが、大腸菌を宿主として用いた大量発現系を構築しこれを利用した安定同位体標識試料を調製することにより帰属が可能であると考えられるため、昨年度に続きこのNMRスペクトルの解析を重点的に進めた。STPRドメインとDNAとの複合体の解析では良好な信号が得られずに解析を進める事が困難であったが、DNA非存在下において、約70%の主鎖信号の帰属に成功した。この解析結果から、DNA非存在下においてSTPRドメインが過渡的にαヘリックス構造を形成していることが明らかになり、この構造がDNA認識に重要である可能性が示唆された
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