研究領域 | 揺らぎが機能を決める生命分子の科学 |
研究課題/領域番号 |
23107702
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30283641)
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キーワード | タンパク質 / ゆらぎ運動 / 一分子蛍光観察 / 細胞内安定性 / 折り畳み運動 |
研究概要 |
本研究は、タンパク質の示す運動を一分子レベルで高速観察すること、さらに、細胞内でのタンパク質の一分子観察を可能にすることを目的として計画した。本年度は、それぞれの実験目的のために必要な装置開発を行った。第一の高速の一分子観察法として、ラインフォーカス型の共焦点顕微鏡を開発し、一分子継続蛍光観察の時間分解能を数十マイクロ秒にまで短縮した。さらに、蛍光観察を二色化し、ドナー蛍光とアクセプター蛍光を同時観察することを可能にした。開発した手法を用いて、マルトース結合タンパク質が基質であるマルトースを認識する過程を観察したところ、リガンドが存在しないアポ型の試料について、マルトース結合タンパク質がさまざまな構造揺らぎを示していることを見いだした。この構造揺らぎは、ホロ型でも観察された。次に、プロテインAの平衡変性過程を一分子観察したところ、変性状態においてさまざまな構造をもつ分子が混在しており、いくつかの副状態に分類できることが示唆された。このように、高速化した一分子観察法を用いることで、従来は観察できなかった変性状態におけるタンパク質の振る舞いが追跡できるようになった。第二の細胞内のタンパク質の観察のために、スキャニング型の共焦点顕微鏡を開発した。アバランチ型フォトダイオードを2チャンネル用意し、ドナー蛍光とアクセプター蛍光の両方を観察しながら、基板においた蛍光試料をイメージングできることを確認した。以上のように、新しい実験装置の開発が順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高速化した一分子観察装置を使うことにより、これまで観察が不可能だと思われていた変性状態内の副状態を始めて観察することが可能になった。これは、当初想定していた範囲を超える驚くべき成果であり、今後多くの研究テーマに発展する可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
上に記したように、ラインフォーカス型共焦点顕微鏡は、我々の想定を越える性能を持っている。研究計画等は当初通りとするものの、今後、この装置を使った実験により多くの学生に取り組んでいただき、世界にない成果の蓄積を図る予定である。
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