研究領域 | 揺らぎが機能を決める生命分子の科学 |
研究課題/領域番号 |
23107703
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
林 久美子 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (00585979)
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キーワード | 分子モーター / 一分子計測 / 非平衡統計 / ゆらぎ |
研究概要 |
タンパク質回転モーターFl-ATPaseの一分子実験に、新しい非平衡統計力学の理論を応用する研究を行った。具体的には非平衡統計力学の分野で知られる、Fluctuation Theoremと拡散のGiant AccelerationをFl-ATPaseの実験で応用した。Fluctuation Theoremの応用では、このゆらぎの理論を用いて回転モーターの回転トルクを測定した。また、野生型のFlのみならず、Flの変異体やFlに類似した他の回転モーターVlの回転トルク測定にも応用した。自分たちのみならず、他の研究グループでも私達の提案した方法でトルク測定がなされ、Flのトルク発生機構を調べるためにトルク測定が行われた。回転モーター研究で私達の提案する方法が普及されるようになった。 拡散のGiant Accelerationの観察では、Flに外部トルクをかける装置を開発する必要があり、23年度はこの装置が動くように設定した。23年度の成果として、F1に回転電場を用いて回転方向に外部トルクをかけることが可能になった。来年度はこの実験系を用いて、外部トルク下のFlの拡散を測定し、拡散のGiant Accelerationという現象を観察したい。また、23年度はLabVIEWというソフトウェアを用いてリアルタイム計測を行った。LabVIEWで、カメラから取得した画像を解析し、Flの回転をリアルタイムで追跡できるようにした。これによって、よいサンプルを多く集めることに成功し、実験が進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fluctuation Theoremを野生型F1のみならず、変異体の研究にも使用できるようになり、Fluctuation Theoremは回転モーターの研究で、一般的に利用され始めた。23年度は拡散のGiant Accelerationは観察までいかず実験系の設立に終わったので、来年度はこの実験でデータを取得できるようにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に実験系を作った拡散のGiant Accelerationについて、来年度は実験データを取得できるようにする。実験データを効率的に取得するため、LabVIEWによるリアルタイム計測にも力を入れる。
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