研究概要 |
電位依存性イオンチャネルは、膜電位に応じてイオンの膜透過性を変えることにより活動電位などの生理現象において中心的な役割を担っている。一般に電位依存性イオンチャネルは、電位センサードメイン(VSD)と、イオン透過路(細胞内ゲートおよびイオン選択性フィルター(SF))を有するポアドメイン(PD)からなる。本研究では、VSDを有しPDを持たない電位依存性プロトンチャネルVSOPと、PDのみからなるpH依存性カリウムチャネルKcsAを解析対象とし、溶液NMR法を用い、電位依存性イオンチャネルの機能に直結したVSDとPDの構造揺らぎの解明を目的とする。 1 KcsA(PD)の活性化・不活性化の各構造間の遷移速度を、13C-zz exchange法で定量的に求めた。また、遷移速度の温度依存性から、高温で活性化構造のpopulationが高くなるのは、不活性化状態が不安定化するのではなく、活性化状態が安定化することによることが分かった。 2 VSOPをリポソームに再構成することにより、電位依存的なVSOPのプロトン透過活性を確認した。VSOPはこれまでに亜鉛イオンにより阻害されることが知られているが、我々が調製した試料でもZnによる阻害が観測されたことから、調製したVSOPが適切な構造をとり、機能を有していることが明らかとなった。 3 VSOP(VSD)のIle,Leu,Valの1残基変異体のスペクトルと野生型のスペクトルを比較することにより、メチル基の帰属を行った。また、メチル基間のNOEの解析を行うことにより部分的に構造情報が得られた。
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