研究領域 | 揺らぎが機能を決める生命分子の科学 |
研究課題/領域番号 |
23107713
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
出羽 毅久 名古屋工業大学, 工学研究科, 准教授 (70335082)
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キーワード | 遺伝子治療 / 核酸送達 / ポリアミン / 脂質 / 原子間力顕微鏡 / 形態変化 / DDS |
研究概要 |
核酸医薬として有望視されているカチオン性脂質と核酸からなる複合体(Lipoplex)は動的分子集合体である。これは分子運動により揺らいだ分子集合体であり、細胞内でその揺らぎにより形態を変化させることで遺伝子輸送、遺伝子抑制機能を発現しているが、その詳細は全く不明である。脂質・核酸複合体Lipoplexの生理条件下での形態変化の詳細を調べ、これを制御できれば、核酸医薬設計の大きなブレークスルーとなり、動的生体分子系の揺らぎ・構造変化とその生体機能発現という新たな学術的なアプローチとなる。これまでに、非常の高い遺伝子送達活性を有するポリアミン脂質の合成に成功しており、今年度は(1)この高活性の原因を突き止めるために、細胞内酸性小胞であるエンドソームと類似環境下において、Lipoplexの形態変化について、原子間力顕微鏡および蛍光分光法により調べた。その結果、高活性のLipoplexは低活性のものに比べ、DNAを緩やかにパッキングしていることが分かった。また、NaCl溶液中で高活性Lipoplexは形態変化を起こし、DNAを放出するが、低活性Lipoplexではこの現象はみられなかった。このことから、緩やかにDNAをパッキングすることにより生理条件下で形態変化起こすことにより、遺伝子送達活性を高めていると考えられた。(2)領域内共同研究として、石井邦彦博士(理研)と蛍光相関分光法によるlipoplexの揺らぎの検出を開始した。現在、諸種のカチオン性脂質からなるリポソームに対して、組み込んだ蛍光色素の蛍光相関分光計測を行っており、サンプル調製条件の最適化を検討している。さらに、この蛍光相関分光計測に用いる新規な蛍光プローブ化脂質の合成も完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画の実験をおおよそ遂行することができ、それぞれに対して明確な結果および次の展開につながる知見が得られた。また、領域内共同研究において、原子間力顕微鏡を用いた膜タンパク質の揺らぎをともなう構造変化についての重要な知見が得られ、現在投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
領域内共同研究で、蛍光相関分光法によるLipoplexの揺らぎの程度と核酸送達活性との相関を明らかにする。また、より細胞内環境に近い条件でのLipoplexの原子間力顕微鏡/全反射方顕微鏡観察を行い、Lipoplexの揺らぎを観察し、機能との相関を調べる。また、別の共同研究により、原子間力顕微鏡を用いた膜タンパク質(チャネルタンパク質)の分子レベルでの揺らぎと機能相関に関する研究を進める。
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