研究領域 | 揺らぎが機能を決める生命分子の科学 |
研究課題/領域番号 |
23107715
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今元 泰 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80263200)
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キーワード | システイン / HD交換反応 / 構造変化 / ロドプシン / 赤外分光 |
研究概要 |
代表的なG蛋白質共役型受容体(GPCR)であるロドプシン(網膜の光センサー蛋白質)の結晶構造が明らかにされて以来、GPCRに関する構造生物学的な研究は飛躍的に進み、刺激によフて細胞内に信号を伝えるメカニズムが、原子レベルで明らかになってきた。しかし、構造のみではGPCRのターゲットとなるG蛋白質に対する高い活性化効率や選択性のメカニズムを記述することはできておらず、別の視点からのアプローチが求められている。本研究では、蛋白質の構造揺らぎに着目し、機能部位の揺らぎの違いやその変化を実測することで、GPCRの選択性の高さや相互作用メカニズムを揺らぎの観点から明らかにすることを目的としている。2011年度は、野生型ロドプシンに存在するシステイン残基のS-H伸縮振動を、フーリエ変換赤外分光法で同定した。また、蛋白質部分の構造変化の前後で揺らぎの変化を観測するため、ロドプシンの蛋白質部分に大きな構造変化が起こって活性化する直前の状態を、FTIR試料でトラップする測定条件を検討した。・脂質の種類や水和度が、ロドプシンの光反応にどのように影響するかについて検討したところ、活性化直前の状態は、フォスファチジルコリン中で安定化されることがわかった。さらに、発色団のシッフ塩基部分のH/D交換実験を行うための測定条件を検討した。 今後は構造変化にともなって構造揺らぎがどのように変化するのか、あるいはリン酸化や制御蛋白質の結合によってどのように変化するのかを部位特異的に解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、初年度にシステイン残基のH/D交換速度の測定条件まで決定することを目指していたが、目的とする反応中間体の安定化条件の決定にとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に従って、リン酸化や制御蛋白質の結合が構造揺らぎにどのような影響を与えるのかを解析することを目指す。
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