公募研究
構造変化経路のマルチスケールモデリングロドプシンは、そのレチナール部分で光を吸収して活性化する。その活性化の最終段階で膜貫通ヘリックスTM6が傾き、その構造変化によってG蛋白質と結合する。昨年このロドプシンの活性化状態ではレチナールが、不活性化状態の向きからほぼ180度フリップした構造をもつことが示唆された。我々は、原子レベルの分子動力学シミュレーションによって、ロドプシンのTM6の構造変化にともなう活性化と、レチナールの回転の共役を解析した。1マイクロ秒を超えるシミュレーションから、活性化前の状態では、レチナールが回転しない向きが安定、一方活性化状態では、レチナールが回転した向きが安定であることがわかった。天然変性蛋白質の構造アンサンブル解析がん抑制遺伝子産物p53のN末ドメインは天然変性領域であり、その一部に転写活性化領域をもつ。まず、NMRのRDCによって残余構造の存在が示唆される領域(計40残基程度)について、各々10残基程度にフラグメント化し、各々全原子モデルのレプリカ交換法によって構造サンプリングを行った。その情報をBoltzmann反転法で粗視化モデルに反映させることで、N末ドメイン全体(約100残基)の構造モデリングを行った。この構造アンサンブルは溶液小角散乱のプロファイルおよびNMRのRDCスペクトルを非常によく再現した。次に、4量体全長p53(4次構造)について、非特異的にDNA2重鎖に結合し鎖上を1次元拡散する様子をシミュレーション解析した。p53はコアドメインと天然変性領域であるC末ドメインの2つのDNA結合ドメインをもつ。我々の計算では、一生理的な条件での非特異的DNA配列に関しては、C末ドメインが主要なDNA結合を果たしていた。
2: おおむね順調に進展している
構造変化経路のマルチスケールモデリングについて、種々の理由から、ターゲット分子をヘムオキシゲナーゼからロドプシンに変えたが、構造変化解析自体は順調に進んでいる。天然変性蛋白質については、p53に集中しており、構造モデリング、NMRなどとの比較、4次構造モデリングなど、順調あるいは当初想定した以上の進捗と言える。
二つの課題とも、研究は順調に進行中であり、このままのペースで推進する。
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