公募研究
蛋白質は折り畳み反応やアミロイド線維形成初期に中間状態をとることが知られている。中間状態構造の理解は、折り畳みやアミロイド線維形成過程を理解するうえで重要な情報である。中間体は一般的に不安定であるため、単離しての構造解析は難しい。一方、ある条件下で中間体は変性状態や天然状態と平衡にあることが示されている。現在はこのような条件下でNMRの緩和解析と呼ばれる方法測定を行うことで、中間体の構造情報を得られる。そこで、この方法を用い、(A)折り畳みや(B)アミロイド線維形成中間体の構造情報を得ることを本課題の目的とした。(A)βラクトグロブリン(βLG)の折り畳み中間体の構造解析βLGは折り畳みの過程で、折り畳み中間体が表れることが知られており、さらにアミノ酸変異を導入するとこの中間体構造が変化することも分かっている。そこで、これら変異体の中間体の構造情報および天然状態の安定性を調べる実験を行った。まず安定同位体標識したβLGを発現精製した。天然状態の安定性を調べるために、重水素交換実験を行った。続いて中間体構造を調べるために、パルスラベル重水素交換と呼ばれる実験を行った。現在は当初予定していた緩和解析実験のための条件検討を行っている段階である。(B)β2ミクログロブリン(β2m)フラグメントの運動性とアミロイド形成能の相関申請者の研究室では以前、β2mの酵素消化により得られた9種類のフラグメントのうち、2つの領域でアミロイド形成能を持つことを報告した。そこでこれらのペプチドの緩和解析から中間体の構造を調べ、凝集性の関係を明らかにする実験を行っている。昨年度は安定同位体標識されたβ2mを発現、酵素消化し、各フラグメントを得た。昨年度終盤から順次、得られたフラグメントの運動性測定を行っている状況である。
3: やや遅れている
本課題の遂行は予定に比べ遅れていると考えている。その主な理由は昨年度蛋白質の発現、精製の収量が低くなる問題が生じ、本課題のベースであるNMR測定が進まなかったからである。そのため、中間体構造の情報を議論できるようなデータが十分に得られていないのが現状である。
上の項目で述べた通り、今年度は試料調製に対して細心の注意を払っていく必要がある。試料の安定供給を図ったうえで予定通りの実験を行い、データ取得と解析をすすめていく。なお、本課題にはパルスラベル重水素交換や緩和解析といった専門的な測定方法が含まれる。申請者の共同研究者にそれらの測定の専門家がいるため、今年度はこれらの共同研究者とより連絡を密にし、効率的にデータ取得が進むよう実験計画をたてていくことを考えている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (12件) 備考 (1件)
Biochemistry
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