ＮＭＲによる折り畳み及びアミロイド形成前駆状態の特性化

2012 年度 実績報告書

• 研究領域: 揺らぎが機能を決める生命分子の科学
• 研究課題/領域番号: 23107719
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 櫻井 一正 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (10403015)
• 研究期間 (年度): 2011-04-01 – 2013-03-31
• キーワード: 蛋白質 / 生物物理

研究実績の概要

蛋白質は折り畳み反応やアミロイド線維形成初期に中間状態をとることが知られている。中間状態構造の理解は、折り畳みやアミロイド線維形成過程を理解するうえで重要な情報である。一般的に中間体は不安定であるため、単離しての構造解析は難しい。しかし、NMRのいくつかの方法で中間体の構造情報を得ることができる。そこで、これら方法を用い、（A）折り畳みや（B）アミロイド線維形成中間体の構造情報を得ることを本課題の目的とした。
（A）βラクトグロブリン（βLG）の折り畳み中間体の構造解析：
βLGは折り畳みの過程で折り畳み中間体が表れ、アミノ酸変異を導入するとこの中間体構造が変化することが分かっている。そこでこれら変異体の天然状態の安定性、折り畳み中間体構造、折り畳み初期の構造形成部位の同定のためにそれぞれ、重水素交換実験、パルスラベル重水素交換、尿素変性条件の緩和速度測定を行った。その結果、天然のβLGは折り畳みが特定の部位から秩序だって形成されているのに対し、変異体ではその秩序が崩れ、結果として折り畳み効率が減少していることが分かった。
（B）β2ミクログロブリン（β2m）フラグメントの運動性とアミロイド線維形成能の相関：
申請者の研究室では以前、β2mの酵素消化により得られた9種類のフラグメントのうち、2つの領域でアミロイド線維形成能を持つことを報告した。そこでこれらのペプチドの緩和解析から中間体の構造を調べ、凝集性の関係を明らかにすることを目的とした。安定同位体標識されたβ2mを発現、酵素消化し、各フラグメントを得たのち、NMRを用いて得られたフラグメントの運動性の尿素濃度依存性を測定した。その結果、アミロイド形成能を持つペプチド配列は、高い尿素濃度の時点で運動の束縛が見られることが分かり、運動性とアミロイド線維形成能の相関があることを示した。

現在までの達成度 (段落)

24年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

24年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] Principal component analysis of chemical shift perturbation data of a multiple-ligand-binding system for elucidation of respective binding mechanism (2013)
  • 著者名/発表者名: Konuma T, Lee YH, Goto Y, Sakurai K.
  • 雑誌名: Proteins 巻: 81 ページ: 107-118
  • DOI: 10.1002/prot.24166
  • 査読あり
• [雑誌論文] Distinguishing crystal-like amyloid fibrils and glass-like amorphous aggregates from their kinetics of formation (2012)
  • 著者名/発表者名: Yoshimura Y, Lin Y, Yagi H, Lee YH, Kitayama H, Sakurai K, So M, Ogi H, Naiki H, Goto Y
  • 雑誌名: Proceedings of National Academy of Science of U. S. A. 巻: 109 ページ: 14446-14451
  • DOI: 10.1073/pnas.1208228109
  • 査読あり
• [雑誌論文] A back hydrogen exchange procedure via the acid-unfolded state for a large protein (2012)
  • 著者名/発表者名: Suzuki M, Sakurai K, Lee YH, Ikegami T, Yokoyama K, Goto Y
  • 雑誌名: Biochemistry 巻: 51 ページ: 5564-5570
  • DOI: 10.1021/bi300495p
  • 査読あり
• [雑誌論文] The monomer-seed interaction mechanism in the formation of the β2-microglobulin amyloid fibril clarified by solution NMR techniques (2012)
  • 著者名/発表者名: Yanagi K, Sakurai K, Yoshimura Y, Konuma T, Lee YH, Sugase K, Ikegami T, Naiki H, Goto Y
  • 雑誌名: Journal of Molecular Biology 巻: 422 ページ: 390-402
  • DOI: 10.1016/j.jmb.2012.05.034
  • 査読あり
• [学会発表] アミロイド線維研究における分析用超遠心、熱量計、密度計の応用例 (2013)
  • 著者名/発表者名: 櫻井 一正（阪大・蛋白研）
  • 学会等名: 生体分子相互作用解析フォーラム 第３回ワークショップ
  • 発表場所: 東京都港区芝公園 芝パークビルB館3階
  • 年月日: 2013-03-08 – 2013-03-08
  • 招待講演
• [学会発表] Relationship between polypeptides' amyloidogenicity and their dynamics (2012)
  • 著者名/発表者名: 櫻井 一正1、柳 浩太郎1、武田 真星1、吉村 優一1、小沼 剛2、李 映昊1、菅瀬 謙治2、池上 貴久1、内木 宏延3、後藤 祐児1（1阪大・蛋白研、2サントリー生命科学財団、3福井大・医）
  • 学会等名: 新学術領域研究「揺らぎと生体機能」 第6回公開シンポジウム
  • 発表場所: 京都テルサ
  • 年月日: 2012-12-05 – 2012-12-06
  • 招待講演
• [学会発表] βラクトグロブリンの折り畳みストラテジー (2012)
  • 著者名/発表者名: 櫻井 一正1、北山 寛貴1、八木 正典2、池上 貴久1、西村 千秋3、後藤 祐児1（1阪大・蛋白研、2阪大・微研、3帝京平成大・薬）
  • 学会等名: 第51回NMR討論会
  • 発表場所: ウインクあいち
  • 年月日: 2012-11-08 – 2012-11-10
• [学会発表] Distinguishing crystal-like amyloid fibrils and glass-like amorphous aggregates from their kinetics of formation (2012)
  • 著者名/発表者名: 吉村 優一1、林 雨曦1、八木 寿梓1、李 映昊1、北山 寛貴1、櫻井 一正1、宗 正智1、荻 博次2、内木 宏延3、後藤 祐児1（1阪大・蛋白研、2阪大・基礎工、3福井大・医）
  • 学会等名: 第50回日本生物物理学会年会
  • 発表場所: 名古屋大学東山キャンパス
  • 年月日: 2012-09-22 – 2012-09-24
• [学会発表] β2ミクログロブリン部分ペプチドの運動性とアミロイド線維形成能との相関 (2012)
  • 著者名/発表者名: 武田 真星1、櫻井 一正1、池上 貴久1、内木 宏延2、後藤 祐児1（1阪大・蛋白研、2福井大・医）
  • 学会等名: 第50回日本生物物理学会
  • 発表場所: 名古屋大学東山キャンパス
  • 年月日: 2012-09-22 – 2012-09-24
• [学会発表] Characterization of the Folding Intermediates and the Native States of β-Lactoglobulin and Its Folding Mutants (2012)
  • 著者名/発表者名: 櫻井 一正1、八木 正典2、池上 貴久1、西村 千秋3、後藤 祐児1（1阪大・蛋白研、2阪大・微研、3帝京平成大・薬）
  • 学会等名: XXVth International Conference on Magnetic Resonance in Biological Systems
  • 発表場所: Lyon Convension Centre, France
  • 年月日: 2012-08-19 – 2012-08-24
• [学会発表] 細胞外シャペロンによるアミロイド線維形成抑制機構の解明 (2012)
  • 著者名/発表者名: 小澤 大作1、長谷川 一浩1、李 映昊2、櫻井 一正2、柳 浩太郎2、大越 忠和1、後藤 祐児2、内木 宏延1（1 福井大・医、2大阪大・蛋白研）
  • 学会等名: 第12回日本蛋白質学会年会
  • 発表場所: 名古屋国際会議場
  • 年月日: 2012-06-20 – 2012-06-22
• [学会発表] アミロイド線維形成時に現れる過渡的中間体のキャラクタリゼーション (2012)
  • 著者名/発表者名: 柳 浩太郎1、櫻井 一正1、吉村 優一1、小沼 剛2、李 映昊1、菅瀬 謙治2、池上 貴久1、内木 宏延3、後藤 祐児1（1大阪大・蛋白研、2サントリー生命科学財団、3福井大・医）
  • 学会等名: 第12回日本蛋白質学会年会
  • 発表場所: 名古屋国際会議場
  • 年月日: 2012-06-20 – 2012-06-22
  • 招待講演
• [学会発表] ウシβラクトグロブリンの非天然折り畳み中間体はスムーズな折り畳みに寄与する (2012)
  • 著者名/発表者名: 櫻井 一正1、藤岡 俊輔1、小沼 剛1、八木 正典2、後藤 祐児1(1阪大・蛋白研、2阪大・微研)
  • 学会等名: 第12回日本蛋白質学会年会
  • 発表場所: 名古屋国際会議場
  • 年月日: 2012-06-20 – 2012-06-22
• [学会発表] A circumventing role for the non-native intermediate in the folding of β-lactoglobulin (2012)
  • 著者名/発表者名: 櫻井 一正、藤岡 俊輔、小沼 剛、八木 正典、後藤 祐児(阪大・蛋白研）
  • 学会等名: BIT's 2nd Annual World Congress of Molecular Cell Biology-2012
  • 発表場所: Beijing International Convention Center, China
  • 年月日: 2012-05-18 – 2012-05-20
  • 招待講演
• [備考] 大阪大学蛋白質研究所 蛋白質構造形成研究室
  • URL: http://www.protein.osaka-u.ac.jp/physical/yoeki.html