公募研究
本研究では、様々な疾患に関連する蛋白質毒性凝集体の形成機構と機能を分子科学的に明らかにするために、潜在的に配列多様性を持つ抗体軽鎖可変領域(VL)の作る、様々な形状の毒性凝集体の形成反応に関わる構造状態間揺らぎ(転移)及び、構造状態内の揺らぎの役割を熱力学的に解明し、揺らぎがもたらす凝集形態の制御機構を理解することを目指した。まず、VLの状態間揺らぎとアミロイド線維凝集能に関して、天然状態の熱力学的安定性、並びにフォールディング速度/中間状態の安定性の観点から調べた。アミロイド線維凝集を患者内で形成するBRE VLとアミロイド線維凝集を形成しないREI VL、及び、両者のキメラ変異体、部位特異的変異体を用いた解析により、βEストランド周辺の残基が、天然状態/中間状態の熱力学的安定性に、重要な役割を果たすことが示唆された。興味深いことに、天然状態の熱力学的安定性が低下することで、凝集速度が促進されることを定量的に示すことに成功した。次に、VLの天然状態内での構造揺らぎに焦点を絞り、NMRによる揺らぎの観測を行った。通常、二量体をVLは形成するが、そのままでは、遅い化学交換のため、シグナル同定が実施できないため、この実験では、一残基変異を入れることにより得られた単量体型REI VLをベースとした解析を行った。単量体型REI VLにて、NMRシグナルの同定を実施することができたため、さらに重水素交換実験を通じた解析を行い、野生型REI VLでは、βEストランド周辺は、揺らぎの少ない領域に位置することが明らかになった。すなわち、同領域への変異導入が天然状態の構造揺らぎを増長させ、天然構造が不安定化することでアミロイド線維形成速度が速くなったことが示唆される。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochemistry
巻: 51 ページ: 6908-6919
doi: 10.1021/bi300542g