研究領域 | 揺らぎが機能を決める生命分子の科学 |
研究課題/領域番号 |
23107723
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
廣田 俊 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (90283457)
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キーワード | シトクロムc / ヘムタンパク質 / 多量体 / 変性 / 構造変化 |
研究概要 |
シトクロムc(cyt c)はミトコンドリアにおいて電子伝達を行うとともに、アポトーシス誘導の際、ミトコンドリアから放出される。研究代表者らは2010年、cy cがC末端領域のαヘリックスをドメインスワッピングすることにより多量体を連続的に形成しポリマー化することを明らかにした。本研究では、揺らぎがcyt c多量体形成に及ぼす影響およびcyt c多量体の機能を解明することを目指す。 平成23年度は、ウマcyt cおよび緑膿菌シトクロムc_<551>(cyt c_<551>)の多量体形成について調べた。酸化型ウマcyt c溶液にエタノールを添加して得られた上清分画に多くの単量体と少量の二量体が検出されたが、二量体より高次の多量体は検出されなかった。一方、沈澱分画には高次多量体が多く検出された。エタノール溶液中では、二量体などの多量体の溶解度は単量体より低く、多量体はエタノール添加によって形成し、沈澱することが示唆された。酸化型cyt cの軸配位子Met80はエタノール溶液中でヘム鉄から解離するが、cyt cのα-ヘリックス構造は保持され、Met80以降のC末端ヘリックスはタンパク質部分から大きく解離しないことが示唆された。沈澱状態のcyt c多量体は単量体と類似したα-ヘリックス構造と球状構造を保持していることも示唆された。cyt c_<551>についてもエタノールを添加することで多量体が得られた。cyt c_<551>の二量体の活性部位と二次構造は、単量体と類似していることが吸収とCDスペクトルより示唆された。X線結晶構造解析より、cyt c_<551>単量体でループを形成するThr20からMet22のアミノ酸残基の構造が二量体形成に伴い変化し、二量体はヘムを含むN末端ヘリックスを交換したドメインスワッピング構造を有し、ヒスチジンとメチオニンの二つの配位子は別々のプロトマーに属することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウマcyt cの多量体形成機構を種々の分光法を用いて解明するとともに、緑膿菌cyt c_<551>の二量体構造をX線結晶構造解析により明らかにし、cyt cの多量体形成機構に関する知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
ウマcyt cや緑膿菌cyt c_<551>とは異なる他のcyt cでの多量体形成を調べる。変異型cyt cを作製し、多量体形成機構を種々の分光法を用いて調べるとともに、安定な高次多量体の作製を目指す。さらに、生体内でのcyt c多量体の形成についても調べ、多量体の機能解明を目指す。
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