研究概要 |
分子シャペロンは蛋白質のフォールディングを援助する特異な働きを持つ。シャペロニンがどのようにしてフォールディングを促進するのか、いまだに統一見解は得られていない。私は最近、シャペロニンの空洞は変性タンパク質と結合している結果を得た(Motojima,F. & Yoshida,M.,EMBO J. 29,4008-4019 (2010))。本研究ではシャペロニンによるタンパク質の局所的な揺らぎの制御がフォールディングにどのように影響しているかを明らかにすることが目的である。 当該年度は、まず予備実験としてシャペロニンによるフォールディングにおける蛍光anisotropyを種々のタンパク質について行った結果、これまでの報告とは異なり、タンパク質はフォールディングしても蛍光anisotropyがほとんど減少しないことが明らかとなった。これはシャペロニンがタンパク質の揺らぎを大きく減少させている証拠である。これらの結果については論文に投稿したところである。 また当初予定していたmCherryはanisotropy測定に不都合であることが判明したため、代わりにBFPを基質タンパク質として用いることした。蛍光寿命anisotropy測定を本新学術領域の石井邦彦氏との共同研究にて行い、シャペロニン空洞内に強制的に結合させた変性BFPの動きは強く抑制された状態であることがわかった。またBFPのフォールディングにおける熱力学的パラメータの同定を行い、ΔCpを小さくすることが判明した。この結果はシャペロニンと変性タンパク質間の疎水性相互作用を示唆している。1分子蛍光anisotropyの実験系については現在ガラス基板の修飾、溶液交換システムを確立したところである。
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