研究概要 |
生体分子の揺らぎと機能は密接であり、生体膜およびタンパク質の揺らぎは生命現象の本質を解明する上で極めて重要な課題となっている。上岡らは脂質分子とミセル分子から成るハイブリッドリポソーム(HL)が、抗がん剤を含まず、がん治療・エイズ治療が可能なことを見出している。がんやエイズ同様に難治性疾患であるリウマチやアルツハイマー病にも細胞膜の揺らぎが関与している可能性がある。 本研究では、異常増殖する患者由来のリウマチ(滑膜)細胞(HFLS-RA)に対するハイブリッドリポソーム(HL)の増殖抑制効果およびリウマチモデルマウスに対するHL-23の治療効果を検討した。(1)in vitroにおけるHFLS-RA細胞に対する増殖抑制試験から、HLの顕著な増殖抑制効果が明らかになった。(2)フローサイトおよびTUNEL法での解析により、HLがHFLS-RA細胞に対し、アポトーシス誘導により増殖抑制効果を示す可能性を明らかにした。(3)関節炎自然発症モデルであるSKGマウスに対するHLの治療実験において、未治療群では、手指関節の腫れと関節の変形がみられたが、HL治療群においては関節の炎症は見られず、リウマチに特徴的な手指の腫れや関節の変形を抑制する基礎的知見が得られた。今後、HLによるリウマチ細胞に対するアポトーシス誘導と細胞膜の流動性との関連性の解明が重要となる(Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters,21(1),207-210(2011))
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