研究領域 | 揺らぎが機能を決める生命分子の科学 |
研究課題/領域番号 |
23107733
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
伊野部 智由 富山大学, 先端ライフサイエンス拠点, 特命助教 (50568855)
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キーワード | プロテアソーム / 蛋白質 / 分解 / 天然変性領域 / ユビキチン |
研究概要 |
26Sプロテアソームは標的蛋白質を選択的に分解することにより様々な生命現象を制御する巨大プロテアーゼ複合体である。ユビキチン-プロテアソーム系では、基質蛋白質に付加されたポリユビキチン鎖が結合標識となり、選択的分解が実現されていると考えられてきた。ところが、近年、プロテアソームによる蛋白質分解には、上記のポリユビキチン標識に加えて、基質蛋白質内にアンフォールディング・分解の起点となるための変性領域が必要であることが明らかになった。その変性領域の性質と分解効率の関係が明らかにされてきている。我々は変性領域が持つ揺らぎに着目し、揺らぎを制御することにより分解を制御することを試みた。そのために、リガンドを結合させることにより揺らぎの制御が可能であると予想される変性領域を含む2種類のモデル基質蛋白質を構築した((i)誘導折り畳みが可能な天然変性状態のSNase変異体を変性領域として用いたモデル蛋白質、(ii)変性領域にテトラシステイン配列を含むモデル蛋白質)。これらモデル蛋白質のin vitroにおけるプロテアソームによる分解速度の解析から、リガンド存在下では分解を抑制できることを明らかにした。さらに、(i)のモデル蛋白質を用いて、変性領域の揺らぎの大きさと分解速度の関係を調べた。また、(ii)のモデル蛋白質を用いて、細胞内における分解の制御の実験を行った。これらの実験結果から、変性領域の揺らぎがプロテアソームによる蛋白質分解に及ぼす影響の評価を行い、その応用の可能性についてさらに研究を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変性領域の揺らぎとプロテアソームによる分解効率に相関があることがわかったが、まだ定量的な評価が得られていない。また揺らぎをターゲットにした分解制御もin vitroの実験で可能であることがわかり、in vivoへの応用研究に向かうことができる。
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今後の研究の推進方策 |
揺らぎと分解効率の相関をはっきりと示すためには、揺らぎの定量的な評価を行う必要があるので、核磁気共鳴やX線小角散乱、円偏光二色性分光を用いた方法で揺らぎの測定を行う。また揺らぎを制御することによる分解制御を酵母や培養細胞を用いて、細胞中での蛋白質分解制御技術の開発に取り組む。
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