研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
23108518
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
塚本 佐知子 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (40192190)
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キーワード | 真菌 / 生合成 / アルカロイド |
研究概要 |
私たちは、2種のAspergills属真菌からDiels-Alderaseにより生合成されたと推定されるインドールアルカロイドの鏡像異性体を3組単離し生合成機構に関する研究を行っている。2種の真菌には異なるエナンチオ選択性を有するDiels-Alderaseが存在すると推定されるが、これまでに天然資源からDiels-Alderaseの存在が確認されている例は3種類のみで、それらの酵素は2段階の反応、すなわち、初めにDiels-Alder反応の基質を提供するような全く別の反応を触媒し、次にDiels-Alder反応を触媒するという非常に巧妙な触媒機構を有している。本研究の遂行により、研究対象としている2種の真菌から第4、第5のDiels-Alderaseが発見され、精緻な構造と巧妙な機能が解明されると期待している。平成23年度に明らかになったことは以下の通りである。 1.2種の真菌を用いてstephacidin Aを取込ませた所、両方の真菌からnotoamide Bが得られた。この結果は、2種の真菌においてエナンチオ選択的なpinacol-type転移が起きたことを示唆している。 2.海洋由来の真菌にdeoxybrevianamide Eおよび6-hydroxydeoxybrevianamide Eを取込ませた所、それぞれpinacol-type転移が起きた化合物が得られた。 3.ハワイのキノコから単離された真菌にnotoamide Eを取込ませた所、notoamides CとDが得られた。 4.最近、立体化学の異なる非天然物を取込ませた所、これまでに得られた化合物とは異なった骨格を有する化合物が得られた。この結果は、非天然物の存在により、これまで休眠していた遺伝子が発現して新たな反応を触媒するようになったことを示唆している。今後、この反応の発現機構も明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記「9.研究実績の概要」に記載した項目のうち1~3は計画どおりであるが、4に記載したことは新たな研究課題の発見といえる。そこで、達成度として(1)を選んだ。
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今後の研究の推進方策 |
取込み実験の結果から推定される生合成経路を検証するため、新たな実験を計画し実行する。また、「9.研究実績の概要」に記載した4について、その発現機構を明らかにしたい。
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