私たちは、2種のAspergillus属真菌(能登半島のイガイから採集した海洋由来真菌とハワイのキノコから採集した真菌)から、Diels-Alderaseにより生合成されたと推定されるインドールアルカロイドの鏡像異性体を3組単離し、生合成機構に関する研究を行っている。2種の真菌には、異なるエナンチオ選択性を有するDiels-Alderaseが存在すると推定している。平成24年度に明らかになったことは以下の通りである。 1. ビシクロ環を有する代謝物は、notoamide Sからnotoamide Tさらにstephacidin Aを経てnotoamide Bが生成し、一方、notoamide Sから6-epi-notoamide Tさらに6-epi-stephacidin Aを経てversicolamide Bが生成すると考えられる。これまでに、代謝産物の中からstephacidin Aは得られているが、notoamide S、notoamide T、6-epi-notoamide T、6-epi-stephacidin Aは得られていなかった。そこで、海洋由来真菌の代謝産物に関してタイムコースをとって生成物を精査したところ、6-epi-stephacidin Aを検出することができた。本化合物の発見は、notoamide Sを鍵中間体としてDiels-Alder反応により生合成が進行するという過程を強く指示するものであると考えている。 2. ハワイのキノコから単離された真菌にnotoamide Sを取込ませた所、Diels-Alder反応により生合成されたと考えられるビシクロ環を有する代謝物が得られたが、海洋由来の真菌に対して同様の取り込み実験を3回行ってもビシクロ環を有する代謝物は得られなかった。
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