本研究では、二次代謝産物の生合成遺伝子群の機能発現を行う斬新かつ挑戦的な戦略として、『ATP生産能が高いε-PL生産放線菌を宿主とした有用物質生産』を提案し、ε-PL合成酵素遺伝子(pls)のプロモーター(Ppls)を利用することでターゲット遺伝子を2次代謝特異的に発現させつつ、さらに、2次代謝特異的にATP細胞内プールが上昇するε-PL生産放線菌を利用することで高効率な物質生産を目的とする。H24年度の研究では、次ぎの2つの研究項目を行った。 研究項目2-(1) pLAE009を基盤とした各種発現ベクターの構築と発現量の向上 pLAE009はターゲット遺伝子産物をC末端Hisタグ融合タンパク質として発現できるようデザインされており、実際に、膜酵素であるPlsの組換え酵素の構築に成功している。現在、pLAE009におけるリボソーム結合部位(RBS)は、pls遺伝子の配列をそのまま利用している。そこで、より発現量を向上させる試みとして、RBS配列の改良を行った。2種類のRBS配列を有する発現ベクター、pLAE009bとpLAE009cを構築しPlsの発現量を評価したところ、いずれも発現量の向上が観察された。 研究項目2-(2) 各種2次代謝産物生合成遺伝子の機能発現による有用物質生産 pNO33レプリコンを有するpLAE009は、放線菌で汎用されるpIJ702やpOJ446と和合性であることから、これらベクターと共存できる。そこで、抗生物質ストレプトスリシン生合成遺伝子クラスターを有するpOJ446とβリジンオリゴペプチド合成酵素を有するpLAE009を用いこれら遺伝子の共発現を行ったところ、βリジンオリゴペプチドのペプチド鎖長がより伸びたストレプトスリシンの物質生産に成功した。さらに、乳酸菌由来のヒアルロン酸生合成遺伝子の機能発現にも成功した。
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