海生糸状菌の二次代謝産物生合成遺伝子、特にポリケタイド合成酵素(PKS)遺伝子の解析を目的として、デカリン骨格を有し微小管重合阻害活性が報告されているphomoposidinの生産菌Phomopsis sp. TUF 95F47と、特異なビシクロ環系を有し神経突起生成活性が報告されているshimalactone Aの生産菌Emericella variecolor GF10の2株について、昨年度に引き続き、ドラフトゲノムデータをもとに解析を進めた。そのうち、shimalactone生産菌であるE. variecolor GF10株においては、contig-564中に確認したPKS遺伝子の発現プラスミドを構築し、これをAspergillus oryzae M-2-3に導入した。この形質転換体を誘導培養し、生産化合物を単離した。ついで、質量分析ならびに各種NMRによる構造解析を行った結果、本PKSの産物がshimalactone生合成の前駆体と予想されていたヘプタエニル β-ケトラクトンであることを確認することができた。これにより本PKS遺伝子を含む遺伝子クラスターがshimalactone生合成遺伝子クラスターであること明らかにすることができた。現在、各遺伝子の機能解析を進めている。また、E. variecolor GF10株には、このPKSを含め、24個のPKS遺伝子が存在することが確認された。研究対象として設定したもう一つの菌株であるPhomopsis sp. TUF 95F47においては、還元型RD-PKS遺伝子が47個、非還元型NR-PKSが22個存在していることを確認し、現在、PKSのドメイン構成と周辺遺伝子の解析からphomopsidin生合成のPKSを絞り込み、その機能解析を進めている。
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