研究概要 |
Streptomyces coelicolorA3(2)の生産するactinorhodin(ACT)は、ベンゾイソクロマンキノン系抗生物質(BIQ)に属する芳香族ポリケタイドである。BIQ系抗生物質の生合成研究には、生合成の反応として有機化学的に興味深い諸反応を含んでいるほか、生産菌中の二次代謝制御全体を考える上でも有用な諸問題を提示している。本研究では、既にBIQ関連生合成遺伝子クラスターとして取得している3種類に加えて、ACT生合成中間体を生産する別種放線菌のゲノムドラフト解析を行い、比較ゲノム解析に供することを中核とする。本年度中の研究成果として以下の通りである。 ACT,granaticin,medermycinの各生合成遺伝子クラスターに共通する二成分系FMOは、BIQ基本骨格形成に必須である6位キノン形成に関与している[1]。多環性芳香族化合物を基質とする同様のFMOは他に例がないため、ACT生合成に関与するActVA・ORF5/ActVBの酵素機能について検討したところ、新たにBIQ骨格をエポキシ化する機能を見出した[2]。他のクラスター中のFMOの機能にも興味がもたれるので、比較機能解析を行った。まずactVA-ORF5破壊体に相同遺伝子med-7,gra-21,alnT(BIQ 類縁体 alnumycin生合成遺伝子)を導入して機能相補性を検討した。この機能相補性は、ACT生産の回復を示唆する青色色素生産で確認できるが、遺伝子導入株はいずれも青色色素は生産しなかった。3遺伝子産物はいずれもActVA-5に対し63~66%と比較的高い相同性を示す。モデリング予測した立体構造も全体的な構造は類似したものの、基質ポケットを構成すると思われるアミノ酸残基についてActVA-5のみ構造が違うことが示唆され、相同遺伝子がActVA-5の機能を完全には相補しなかったと考えている。一部の遺伝子導入株では、コントロールにはみられない色素生産性が認められたのでその代謝産物プロフィールを解析中である。一方、放線菌Sttreptomyces tanashiensisを比較ゲノムの対象として選定して、ゲノムドラフト解析を実施し、配列データの取得に成功した。現在、アセンブルデータの解析を進めている。
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