研究実績の概要 |
Streptomyces coelicolorの生産する actinorhodin (ACT) は、ベンゾイソクロマンキノン系抗生物質(BIQ)に属する芳香族ポリケタイドである。本研究では、既知のBIQ関連生合成遺伝子クラスター3種類に加えて、別種放線菌のゲノムドラフト解析を行い、比較ゲノム解析に供することを中核とする。 (1) ACT生合成において6位酸化反応の基質となる中間体6デオキシジヒドロカラファンギン(DDHK)を生産する遺伝子再構成株(CH999/pIJ5659)にactVA-ORF5、gra-21およびmed-7を導入し、得られた形質転換体の代謝産物を分析したところ、actVA-ORF5、gra-21を導入した株は8-hydroxy-DHKを生産するのに対し、med-7導入株はDHK生産を確認した。この結果、ActVA-ORF5とGra-21はDDHKの6位および8位を連続して酸化する二機能性モノオキシゲナーゼであり、Med-7は6位のみを酸化する単機能性であること、さらに、ACT生合成は二量化前に8位水酸化反応が進行することが示された。 (2) Streptmyces tanashiensis JCM4086株のゲノムドラフト解析を実施し、総コンティグ数1,912、総コンティグ塩基数9,202,482 bpを得た。配列情報はBIQ基本骨格形成に必須のketosynthase(ActI-ORF1)との相同性を基準に解析したところ、6個のコンティグ配列を見出すことに成功した。特に全長22kbを有する#823の中には、別種放線菌が生産するmedermycin(MED)の生合成遺伝子クラスターとほぼ同一配列であった。JCM4086株からMEDを生産する報告はこれまでなくバイオインフォマティクスから潜在的な菌代謝産物の生産性を予測できる有用な知見と考えられる。
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