研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
23108529
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
北川 航 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究員 (60415669)
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キーワード | Rhodococcus / 抗生物質 / 次世代宿主 |
研究概要 |
本研究では生合成マシナリー構築のための新規宿主をロドコッカスで開発する事を目指している。ロドコッカスは外来プラスミドの保持安定性が良くないという欠点があるが、この性質は株によって大きく異なると予想される。宿主として望まれる保持安定性が高い株を得るため、まず80株のロドコッカス野生株を対象にスクリーニングを行った。まず用いるプラスミドベクターを以下の様に作成した。本研究室で開発されたpNit-QC2ベクターはクロラムフェニコール耐性遺伝子を唯一の選択マーカーとして持っている。このベクターにアプラマイシン耐性遺伝子およびテトラサイクリン耐性遺伝子を同時に導入し、上記3つの選択マーカーを持つpNit-CAT構築した。これを導入した株をクロラムフェニコールのみが含まれる培地で10継代の液体培養を行い、その後クロラムフェニコールのみが含まれる固体培地でシングルコロニーを取得し、さらに3つの抗生物質が入った固体培地に植え継いでその生育を確認する事でプラスミド保持安定性を評価した。その結果ほとんどの株で外来プラスミドの保持安定性が良くないか、その他の宿主としての性質が適さない(生育速度が遅い、菌塊あるいはバイオフィルムなどを形成しやすい)事が判明した。しかしながら安定的に外来プラスミドを保持出来る2株を選抜する事に成功した。 またロドコッカス属細菌で利用できる新規の発現ベクターの開発も進めた。ロドコッカス株に存在する新規の野生型の小型環状プラスミドを発見する事に成功し、その全塩基配列を決定した。その結果これまで知られているどのプラスミドとも異なる、新規・未分類のタイプの複製領域を持つ事が判明した。 これら新規の安定宿主候補、および新規プラスミドの性質をさらに解析し改変する事で、生合成マシナリーに用いる最適化ロドコッカス宿主および新規の発現ベクターを提供出来ると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
約80株のロドコッカス属細菌を対象に、安定的に外来プラスミドを保持する株のスクリーニングを行ない、10継代の液体培養においても安定的に外来プラスミドを保持出来る2株(安定宿主候補)を選抜する事に成功した。またこれとは別にロドコッカス株に存在する新規の野生型の小型環状プラスミドを発見し、その複製領域(新規、未分類のタイプ)を特定する事に成功した。これらの研究をさらに進める事で優れた宿主-ベクター系の開発に繋げる事が出来る。(候補株の選定については実施計画に記したプランA2で行った)
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今後の研究の推進方策 |
これまでに選抜した安定宿主候補のその安定性をさらに検証するとともに、宿主として望まれるその他の性質についても検討する。またこれらの株はゲノム解析株ではないためゲノム解析を行い、すでにゲノムが公開されているロドコッカス株(外来プラスミドは安定ではない)の情報と合わせ、安定化に寄与する遺伝子の検索などを行いたい。また新規に発見したロドコッカスのプラスミドについて、抗生物質耐性遺伝子やプロモーターを導入し、発現ベクターへと改変して行く予定。
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