研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
23108531
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
邊見 久 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (60302189)
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キーワード | 生体分子 / 酵素反応 / 脂質 / アーキア |
研究概要 |
アーキア特異的なイソプレノイド膜脂質の生合成において、ほぼ全ての膜脂質の前駆体と考えられている中間体、ジゲラニルゲラニルグリセロールリン酸までの生合成反応を触媒する4つの酵素の遺伝子を常温性アーキアより単離した。これらを全て大腸菌で発現させることで、アーキア型膜脂質を生産する生合成マシナリーを構築した。生産された脂質の構造解析の結果、その大部分は大腸菌内在の代謝システムによりホスファチジルグリセロール様の化合物に変換されていることが分かった。このマシナリーは、今後の生合成研究に有用な基質を合成できるだけでなく、アーキア由来の機能未知遺伝子をさらに導入し、生産される脂質に起きる構造変化を分析することにより、追加導入された遺伝子にコードされる酵素の機能同定にも役立つと期待される。アーキア膜脂質の生合成に関しては他にも、好熱性アーキア由来のゲラニルゲラニル基還元酵素の立体構造解析に成功し、その触媒機構の一端を明らかにしている。現在、上述したマシナリーへの同種酵素の組み込みを進めている。 また、一部アーキアが生産する膜内在性電子キャリア、メタノフェナジンの生合成に関わるプレニルニリン酸合成酵素について、変異実験と構造モデリングを行い、生成物鎖長を決定するキャビティー構造について新たな知見を得た。この結果は今後非天然イソプレノイド化合物を生産する生合成マシナリーを構築する際に役立つと期待される。 また、イソプレノイド生合成の初期段階であるメバロン酸経路関連酵素についても、イソペンテニルニリン酸イソメラーゼを初めとした複数の酵素について反応機構などの理解を深めることができた。これらの成果をマシナリーに還元することで、イソプレノイド生合成全体のフロー改善と、それによる目的生成物の収量向上が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要課題の1つである、大腸菌におけるアーキア膜脂質の生合成については、生合成マシナリーの構築と生産される生合成中間体の定量、構造解析までを達成できた。呼吸鎖キノン生合成に関わるプレニル基還元酵素に関しては思うような結果が得られていないが、同じく膜内在性電子キャリアであるメタノフェナジンの生合成酵素、およびイソプレノイド生合成全体のフローに関わるメバロン酸経路の酵素について順調に研究成果が出ている。
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今後の研究の推進方策 |
アーキア膜脂質の生合成に関しては、既知経路以降の反応を触媒する酵素を引き続き探索する。その際の機能スクリーニングには、構築済みの生合成マシナリーが有用な手段となるはずである。また、プレニル基還元酵素に関しては探索のターゲットを膜内在性電子キャリア全般からメタノフェナジンの生合成に絞り、プレニル基転移酵素なども含んだ包括的な解明を進める。また、立体構造が解析済みの好熱性アーキア由来ゲラニルゲラニル基還元酵素を用いて、より詳細な触媒機構の解析を進めたい。具体的には、生合成マシナリ搾により生産されたアーキア膜脂質と酵素の複合体を形成させ、その構造解析を行う。
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