研究領域 | 高次π空間の創発と機能開発 |
研究課題/領域番号 |
23108708
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
俣野 善博 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40231592)
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キーワード | ポルフィリン / 擬ポルフィリン / 錯形成 / ホスファメタラサイクル / ジアザポルフィリン / 芳香族性 / 吸収特性 / 酸化還元電位 |
研究概要 |
本年度では『典型元素の特性が最大限に発揮されるようなπ空間を創発し、その機能を利用する』ことを目的として、期間内に主に次の課題に取り組んだ。(i)β無置換ジアザポルフィリン金属錯体の高効率合成法の確立、(ii)(i)で合成した金属錯体の構造・物性の解明。(iii)β無置換ジアザポルフィリン金属錯体のペリ位化学修飾法の確立と物性の評価。まず、アジ化銅とジブロモジピリン-金属錯体の鋳型反応を利用して、β無置換ジアザポルフィリン-ニッケル錯体および-銅錯体を80%以上の高収率で合成する事に成功した。次いで、X線結晶構造解析、吸収スペクトル、芳香族性、酸化還元電位測定により、合成したπ系の結晶構造、吸収特性、および電子受容性・電子供与性を調べた。その結果、メソ位への窒素原子の導入によりβ無置換ポルフィリンπ系のフロンティア軌道が大きな摂動を受け、その電子受容性が高まることや、長波長領域の可視光に対する感受性が増すことなどが明らかとなった。さらに、β無置換ジアザポルフィリン-ニッケル錯体のβ位を位置選択的に臭素化する反応条件を最適化し、クロスカップリング反応を利用して四つのフェニル基をペリ位に導入することに成功した。この化学修飾により、ジアザポルフィリンのπ系は大きく拡張する。一方、(iv)ホスファメタラサイクルで架橋されたポルフィリン二量体の吸収特性や光物性の解明にも取り組み、架橋金属としてパラジウムや白金を用いた場合、π系全体の吸収特性や電気化学特性が金属d軌道とポルフィリンπ軌道との反結合性軌道相互作用の強弱に依存することを実験・理論両面から初めて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、合成した各種ポルフィリン誘導体を用いた有機薄膜太陽竃池の作製とテバイス特性の評価まで想定していたが、期間内に検討するには至っていない。しかしながら、今回確立したジアザポルフィリン金属錯体の高効率合成法や、ペリ位の位置選択的な化学修飾法は、今後ジアザポルフィリンを母核とする機能性材料を設計・開発するうえで、極めて有望な方法であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
得られた知見を今後有機薄膜太陽電池などへ応用するには、固体状態におけるπ系の組織化と中心金属の選択が鍵を握ると考えている。そこで、外周部へ適切な置換基を導入することで平面指向性の高いジアザポルフィリン金属錯体を構築し、この問題に対応する。現在、さまざまな金属錯体の構築へ向けて、フリーベース体の合成法を最適化している段階である。
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