公募研究
共役高分子は、有機電界効果トランジスタや有機太陽電池への応用が期待されている。フィルム中の電荷キャリア移動度は、分子間スタックやグレインサイズ・バリアに大きく左右されるが、高分子鎖本来が持つ分子内移動度は高いと考えられる。しかし、後者の測定はTime Of Flight(TOF)法やField Effect Transistor(FET)法などの従来の直流型測定法では困難である。一方、時間分解マイクロ波伝導度測定法(TRMC)のような交流型測定法では、電極との接触なしに電荷移動度を算出することができる。特に、polystyreneなどの絶縁マトリックス中に分散させることで、分子間移動度の寄与を最大限排除し、高分子鎖の形、電子状態に直接相関した情報が得られることが期待される。しかし、絶縁マトリックスに分散させた場合は、直流型測定法などで光励起電荷キャリア発生効率φを求めることは不可能であるため、過渡吸収分光法でφを見積もらなければならない。ペリレンビスイミドは720nm付近に特徴的なアニオンラジカルの吸収を持っており、さらに多くのドナー高分子との間で光誘起電子移動が観測される。そこで今回、ペリレンジイミド(PDI)に二重結合を修飾し、styrene分子とラジカル重合させることで、PDI-styrene共重合体を合成した。TRMC法を用いて測定された分子内伝導度と、過渡吸収分光法により測定されたキャリア生成密度とを組み合わせることにより、電子受容性マトリックス内に孤立分散したp型共役高分子の分子内電荷移動度の完全定量測定が可能となる。また、p型共役高分子とPDIとをマトリックス中に分散させたものと比較を行うことにより、マトリックスに直接アクセプター分子を導入する効果について見当を行った。その結果、代表的なp型共役高分子である立体規則性ポリチオフェンを対象とし、新規電子受容性絶縁マトリクスを用いた完全実験定量に成功した。
2: おおむね順調に進展している
申請書に記載したナノ~マイクロスケールの電荷輸送特性評価のための新規絶縁マトリクスの開発について、H23年度中にその合成と実際の測定定量まで行うことができたので、おおむね順調に進展している。
本年度は、このマトリクスを使って有機薄膜太陽電池のp型高分子として注目されているドナー・アクセプタータイプの低バンドギャップ高分子の分子内電荷移動度定量を行う。併せて、通常の電極を用いた電荷移動度定量法であるFET・TOF・SCLC評価を行い、ナノ~マイクロスケールの電荷輸送特性を包括的に明らかにする。さらに、n型高分子の分子内電荷移動度定量のためのp型絶縁マトリクスを設計・合成する。これにより、多種の材料に対して単に混ぜて塗布することで"分子内電荷輸送特性"を評価することができると考えられる。
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http://www.researcherid.com/rid/B-7756-2011