公募研究
共役高分子は、有機電界効果トランジスタや有機太陽電池への応用が期待されている。フィルム中の電荷キャリア移動度は、分子間スタックやグレインサイズ・バリアに大きく左右されるが、高分子鎖本来が持つ分子内移動度は高いと考えられる。しかし、後者の測定はTime Of Flight (TOF) 法やField Effect Transistor (FET) 法などの従来の直流型測定法では困難である。一方、時間分解マイクロ波伝導度測定法(TRMC)のような交流型測定法では、電極との接触なしに電荷移動度を算出することができる。π共役分子ナノワイヤーとしてアモルファス性の共重合体を対象とし、TRMCによる1次元分子内電荷移動度を評価した。その結果、2種のπユニットから成る共重合体の導入割合が1:1付近で移動度は0.7から0.3 cm2/Vsまで急激に減少し、その後、1種のホモポリマーでは0.7 cm2/Vsまで回復した。この現象は密度汎関数法で得られるラジカルカチオンの非局在性と分子の“形”と相関があると考えられる。一方、FETでは10-5~10-7 cm2/Vsオーダーの移動度が得られ、さらに全く異なる導入割合依存性を示した。マクロな移動度は重量平均分子量と再配向エネルギーを乗じたパラメータとの間に相関があることが示唆された。このように、評価する空間スケールによって電荷キャリア移動度の値は大きく異なり、さらにそれを決定する要因も変わってくることが分かった。有機トランジスタなどの実際のデバイスでは、長距離並進輸送を反映したマクロな電荷移動度が重要であるが、ミクロスケールの高い電荷移動度をいかに長距離輸送に反映するかが、さらなる性能向上において鍵となる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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