研究概要 |
申請者は、逆Diels-Alder反応によりπ電子系を融合させる方法を開発し、高度にπ系の広がった化合物群の合成を行ってきた。本申請の研究では、これまでの研究をさらに発展させることを目的として、以下の課題を検討することとした。 課題(1) BCOD内部縮環ヘキサフィリン合成の検討 課題(2) 光で分解するジカルボニル架橋やカルボニル架橋を持つ2H,6H-ベンゾ[1,2-c;4,5-c']ジピロール前駆体合成の検討 課題(3) 二重混乱NCフロリンのエチレン架橋をジカルボニル架橋またはカルボニル架橋に変えた化合物の合成 課題(4) 近赤外吸収色素としてのπ電子系融合ボロンジメテン色素の合成 課題(5) 大環状ポルフィリノシクラセン合成 今年度は課題(1)~(4)を検討した。課題(1)では、種々条件を検討したが、BCODが内部に縮環したジヒドロヘキサフィイリンが少量得られるのみで、ベンゼン架橋体への変換は検討できなかった。課題(2)では、カルボニル架橋2H,6H-ベンゾ[1,2-c;4,5-c']ジピロール前駆体を合成した。この化合物は、非常に反応性に富み、すぐに分解してポリマーとなることが分かった。このことは、このユニットをπ系に組み込めばこれまで困難であったπ系の構築や融合に使えることが分かった。課題(3)では、現在カルボニル架橋フロリン誘導体の合成を行っている。課題(4)では、近赤外領域にのみ大きな吸収を有するπ電子系融合ボロンジメテン色素の合成に成功し、特許並びに論文の投稿を行った。課題(5)については平成24年度より開始する予定である。
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