研究概要 |
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)分離精製試料における物性研究の問題点として、現状の試料は、SWCNTがランダムに配列した凝集系であることが挙げられる。そのような凝集系では、ランダム性に由来して伝導電子は必然的にSWCNT内に局在し、その界面で散乱される為、それは導電性能を悪くさせる大きな要因となっている。例えば、SWCNTネットワークを利用した電界効果型トランジスタ(FET)において高移動度を実現するには、SWCNT間の接合界面の制御が極めて重要であることが認識されている。その問題を根本的に解決する為には、SWCNTが構造を揃えて配列したSWCNT結晶系を創製する必要がある。本研究では、蒸気拡散法を用いて、(6,5)カイラルSWCNTの結晶化実験を行い、針状結晶を得ることに成功した。SWCNTが結晶内に含まれていることを、顕微ラマン分光測定によって明らかにし、偏光依存性から結晶軸方向に配列している傾向がみられた。しかしながら、配向度は悪い為、更なる改善が必要な状況である。結晶化によって高純度化が起きていることが分かっている。イオン液体をゲート絶縁体として用いたデバイスを作製し、針状結晶はFET動作が可能であることを明らかにした。
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