研究領域 | 高次π空間の創発と機能開発 |
研究課題/領域番号 |
23108719
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
川瀬 毅 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (10201443)
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キーワード | 縮合多環状共役系化合物 / 曲面状共役系化合物 / 有機半導体 / 大環状化合物 / 有機光学材料 / 有機光学材料 / 有機結晶 |
研究概要 |
π電子に囲まれた空間、いわゆる"π空間"をもつ構造は、フラーレン類に限らず、カーボンナノチューブやカーボンナノホーンなど、ナノテクノロジーへの応用が期待される炭素新物質のもつ特異な構造である。申請者は、これまでの研究背景をもとに、これまでにない非平面状の"π空間"をもつ化合物を構築し、曲面状の共役系間に働く相互作用の本質を明らかにし、さらに機能性超分子システムへ展開することを目的として研究を行っている。そのなかで、π拡張フルオレンの一種であるテトラベンゾフルオレン(TBF)の17,17-ジアルキル体が固体(粉末)状態で高い青色蛍光発光特性(量子収率:R=n-pentyl~100%)を示すことを見出した。またTBFから17-位の酸化によるケトンの合成、フルバレン類の構築、t-ブチル化によりテトラ-t-ブチル体の合成などを行った。また、ジアルキルTBFは3,14位を選択に臭素化することができ、鈴木-宮浦カップリングにより種々のアリール基を導入することができた。このジアリール体は強い蛍光発光を示し、またパラ位の官能基によって発光波長が変化した。特にジ-p-ニトロ体は溶媒を変えることでフルカラーの蛍光を示した。またニトロ体は極性溶媒中では蛍光が消光されるが、含水THF中で水分量が70%を超えると榿色の特異なCrystallization Induced Emissionを示した。またジピリジル体は溶媒の酸性度により蛍光が青から黄色へと変化し、またポリマーフィルム中で温度変化に伴う蛍光変化(青→緑)が観測されるなどセンサーとしての機能も見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにない非平面状の"π空間"をもつ化合物である、テトラベンゾフルオレン誘導体の特異な発光特性を見出すことができた。さらに、その性質を検討することで、曲面状の共役系をもつペンタ-iso-ベンゾコラヌレンへの合成を視野に入れることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでほとんど研究されてこなかったテトラベンゾフルオレン(TBF)を基本骨格に、発光材料や有機半導体として有用な化合物を創出することを目的として研究を行う。TBF骨格をもとにさらに共役系の拡張を行い、現在注目されている5員環やヘテロ原子を含むナノグラフェン型化合物の構築へと展開する。TBF骨格をもつフルベン・フルバレン類は長波長に強い吸収を持つ色素であり、太陽電池素子への応用なども検討するとともに、脱水素閉環反応により5員環を含むナノグラフェン(ペンタベンゾコラヌレンなど)への変換も検討する。
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