研究領域 | 電磁メタマテリアル |
研究課題/領域番号 |
23109511
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
石原 一 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (60273611)
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キーワード | メタマテリアル / プラズモン / ナノキャップ / 励起子 / 自己無撞着 |
研究概要 |
本研究課題では周期的サブ波長構造による構造共鳴(或いはプラズモン共鳴)と量子閉込めによる電子的共鳴のセルフコンシステシトなインタープレイが引き起こす新奇なメタマテリアル現象を探索することを目的としている。23年度は主に以下の2点について進展があった。 [1]プラズモン共鳴を有する構造が周期的に配列した系の計算手法を、多重極散乱理論におけるT行列法及びvector-KKR法などを基に構築した。この手法により例えば、円筒状磁性誘電体が周期的に1列に並んだ層が複数配列した系にフォークト酉己置で光を入射させた場合の応答電場を厳密に計算することが出来、周期的配列系の薄膜を透過した光の伝播、及び2次元磁性フォトニック結晶内部におけるWGMの光渦に起因した伝播光についての議論が可能となる。 [2]一方、プラズモン共鳴によるアンテナ効果を有する金属ナノ構造と量子ドット(分子)等が量子力学的に結合した単一ユニットにおける光学応答を調べ、次のような効果を見いだした。これまで本グループでは光アンテナ系と分子等吸収体が量子力学的に結合した際に、結合状態の干渉効果によって光エネルギーが金属を透過し、吸収体に大半が集中する現象を見いだしているが、23年度、吸収体が3準位系であればこの効果が著しく増強し、特に波長変換を伴う形で高い効率で反転分布が起きることを見いだした。 この結果より、以上のユニットを周期配列した場合には、以上発光現象により、例えば、インコヒーレント光がコヒーレント光に変換されるなどの新しいタイプのメタマテリアルの創出が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度の計画として、[1]構造共鳴(或いはプラズモン共鳴)を持つサブ波長構造と、電子的共鳴を持つナノ構造が混在して周期構造を形成する場での、セルフコンシステントな光学応答を数値的に評価する手法の確立、[2]既存のメタマテリアル構造に電子的構造が結合した場合に光電磁応答が空間的、周波数的にどのように変調されるかの、電子的共鳴の非線形効果まで含めた検討、の一部の2点を課題としたが、[1]の定式化については構造共鳴を含む系への手法がほぼ出来上がってきた。また、[2]については、ユニットを周期配列した際の効果については今後の課題であるが、ユニット単位では非線形効果まで含めた検討が出来ており、これらの成果を総合的に判断して概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
23年度はプラズモン共鳴を有するアンテナ構造と電子共鳴を持つ分子が結合した際の線形応答を議論したが、今年度はさらに2光子過程を含む非線形応答を計算し、特に波長変換的に反転分布が形成される条件を探索する。この効果が増強される条件を、ユニット構造の配向・配列、ユニット構造のダンピング、電子共鳴体のサイズなどをパラメーターにして詳細に調べる。また、24年度はプラズモン共鳴と電子共鳴を含むユニットの配列構造により、インコヒーレント光をコヒーレント光に、波長変換を伴う形で変換される機構を探る。波長変換を伴う形で反転分布が起こる条件が明らかになれば、さらにそのような構造が超蛍光を生じる条件を探り、新しいタイプの光変換を実現するメタマテリアルの提案に結びつける。
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