研究実績の概要 |
晩発性パーキンソン病原因遺伝子産物であるLRRK2は、同一分子内にGTPaseドメインとキナーゼドメインを有する巨大なタンパク質である。LRRK2のミスセンス変異により発症するパーキンソン病は優性遺伝形式をとるため、タンパク質の機能獲得による神経変性であると考えられている。我々はLRRK2結合タンパク質の同定から、LRRK2の機能とその破綻による神経変性メカニズムにアプローチした。LRRK2の結合タンパク質LBP1, LBP2は、ドメイン構造からそれぞれユビキチンリガーゼとアダプタータンパク質と考えられる。ショウジョウバエを用いた遺伝的相互作用から、LRRK2,LBP1,LBP2はNotchシグナルのリガンドDelta/Dll1のエンドサイトーシスと小胞輸送を経由した細胞膜へのリサイクリングに関与することが明らかとなった。その結果、細胞膜状で安定化したDelta/Dll1がNotch受容体の機能を阻害(側方抑制)することを観察した。in vivoにおいてLBP1, LBP2を含むLRRK2複合体がNotchシグナルを抑制することを、マウス胚脳およびショウジョウバエの羽の発生により確認した。次に、Notchシグナルの抑制が成熟ドーパミン神経でどのような影響を及ぼすのかをショウジョウバエにおいて観察した。その結果、Notchのノックダウンがドーパミン神経の機能を抑制し、寿命が短縮することを観察した。現在、Notchシグナルが成熟したドーパミン神経の神経活動に関与しているかどうかを解析中である。
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