研究実績の概要 |
本研究では、免疫病理組織学的および定量的RT-PCRを用いた分子生物学的手法により、孤発性ALS患者の生検皮膚におけるTDP-43 mRNA発現量を検索し、孤発性ALSの分子病態におけるTDP-43発現上昇の病態との関連を明らかにし、運動神経選択性の分子基盤を検索することを目的とした。ALS患者および対照疾患患者のヒト生検皮膚で、3.8%チオシアン酸アンモニウムを用いて表皮と真皮を酵素学的に#21085;理し、表皮部分からRNAを抽出した。TDP-43の翻訳領域にprimer/probeを設計し、表皮の内部コントロール分子としてKeratin (KRT) 5, 10を用いた。これらによりTDP-43 mRNAの定量をTaqmanの定量的RT-PCRによって行い、ALS患者12例および対象疾患患者8例の解析を終えた。TDP-43‐KRT10間のCp値の差は疾患対照群:8.02に対しALS群:7.25と低く(P=0.0010)、ALS患者皮膚においてTDP-43のmRNA発現量が1.76倍に増加していることを示していた。TDP-43-KRT5間では疾患対照群:7.68、ALS群:7.85であり、統計学的な有意差を認めなかった(P=0.29)。ALS罹患期間とTDP-43の発現量の関係においては、罹患期間の増加によってTDP-43 #8211; KRT10間のCp値には変化がなく(P=0.61)、加齢によっても変化がないことが示された(P=0.36)。以上よりALS患者の皮膚ではTDP-43のmRNA発現が亢進する病態が存在するが疾患進行によるmRNA発現量には変化がなく、凝集するTDP-43蛋白の増加に対するmRNAによるnegative feedback機構が破綻している可能性があると考えられた。
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