研究概要 |
1)ストレスホルモン(グルココルチコイド)曝露に伴うスパイン脆弱化の分子メカニズム 我々は、ストレスホルモンを全く含まずシナプス形成に至る完全合成培地を用いた長期神経細胞培養系を開発した。この培養系を用いて、ストレスホルモン(濃度依存性)がスパイン脆弱化を惹起することを見い出した。さらにこれは、ストレスホルモンによるカルデスモン発現抑制がアクチンフィラメント不安定化を来たすことによることも明らかにした。次いで、ストレスホルモンによるカルデスモン発現抑制はMRTF/SRF系の負の転写制御と同時にカルデスモン蛋白質分解系の亢進によることを見い出した(submitted)。 2)胎生後期のストレスホルモン曝露による後交連形成障害の分子メカニズム 胎生後期のラットのストレスホルモン曝露は、大脳発達の一過性遅滞を来たすが、この遅滞は思春期以降に回復することが知られている。我々は11.3テスラMRIを用いたトラクトグラフィー解析で、海馬・前頭葉などの神経回路網形成障害を見い出した。殊に、後交連形成不全は著明であった(in preparation)。これに関連して、in vitro培養系で神経軸索の伸展に新たなミオシン・カルデスモンの相互作用が必須であることを報告しており(J.Biol.Chem,287,3349-3356,2012)、ストレスホルモンによるカルデスモン発現抑制が神経軸索伸展抑制により後交連形成不全を起した可能性が強く示唆するに至った。現在、後交連を始めとしてストレスホルモンによる神経回路網形成障害に伴なうシナプス形成不全の分子メカニズムを解析中である。
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