研究領域 | シナプス・ニューロサーキットパソロジーの創成 |
研究課題/領域番号 |
23110513
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
松本 直通 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (80325638)
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キーワード | シナプス関連分子 / 遺伝子変異 / 次世代シーケンス / 脊髄小脳変性症 / てんかん |
研究概要 |
常染色体劣性遺伝性小脳失調症(以下ARCA)は、非進行性の小脳低形成や進行性の脊髄小脳変性症(以下SCA)等を含む不均一な疾患の総称である。これまでに20種類以上のARCA責任遺伝子が同定されており、欧米諸国ではFriedrich失調症の頻度が最も高いが、日本人では報告例がなく、ARCAの遺伝的原因は不明な点も多い。本年度は、精神運動発達を基礎に持ち、高齢になってから失調症状が明らかとなった1家系の近親婚ARCA家系を対象として次世代シーケンサーを用いたエクソーム解析を行い、その疾患責任遺伝子を単離することを目的とした。homozygosity mappingでは3領域、計11.35Mbが候補領域としてクローズアップされた。エクソーム解析の結果では同候補領域内に、SNP登録のないアミノ酸変異を伴うホモ接合性変異は2種類であり、サンガー法でも存在が確認された。このうち家系内表現型と変異が連鎖したのはSYT14のミスセンス変異のみであった。この変異は正常日本人576アレルで認められず、複数の変異効果予測プログラムにおいて病的であることが示唆された。同遺伝子のmRNAはヒト、マウス脳(特に小脳)において発現し、マウスおよびヒト小脳の免疫染色では同遺伝子産物はPurkinje細胞に特異的に局在した。野生型、および変異型のタンパク質を培養細胞(COS-1細胞)に強制発現すると、野生型では細胞膜近傍への蓄積が認められるのに対し、変異型では細胞膜近傍への局在がみられず、小胞体への局在が観察された。細胞内局在の変化は細胞分画法によっても確認された。以上から同定した変異がARCAの原因であることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ARCAの新規原因遺伝子の一つであるSYT14を同定することに成功し、解析手法の妥当性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
同様にSNPマッピングや次世代シーケンシングを利用した効率的な遺伝子単離を展開していく予定である。ARSCAあるいは小児てんかんを対象に効率的なシナプス関連分子探索を行う。
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