研究概要 |
神経変性疾患の病態解明と新規治療法を開発することを目的として,血管内投与により広範な中枢神経領域の神経細胞に効率よく遺伝子を導入できるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを応用して研究を実施した.前頭側頭葉変性症(FTLD)において神経細胞内のユビキチン陽性封入体の成分として同定され,その後,家族性の筋萎縮性側索硬化症(ALS)で遺伝子変異が見いだされたTDP-43は,病態解明の鍵となる分子として注目されている.本研究では,TDP-43を発現する血管内投与型AAVベクターを応用してモデル動物を作製した.AAVベクターを成体動物に投与することにより,従来の遺伝子改変動物とは異なる発達過程の影響を受けない神経変性疾患のモデル動物を作製できる.23年度は成体マウスへ投与し運動機能障害を呈するモデル動物を作製した.さらに血管内投与型AAVベクターを応用した新規遺伝子治療法として,miRNAを発現するベクターを作製し,中枢神経内の神経細胞へ送達することに成功した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの血管内投与型のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを改良し,一層効率よく脳と脊髄の神経細胞に遺伝子導入可能なベクターを開発した.このAAVベクターにTDP-43遺伝子を搭載し,成体マウスの血管内に投与した.このマウスでは運動機能の障害が認められ,脳の組織解析で導入したTDP-43の遺伝子発現を確認した.miRNAを発現する血管内投与型ベクターを開発した.このベクターを使用して球脊髄性筋萎縮症(SBMAの病態に関連したmiRNAをSBMAのモデルマウスに投与したところ,脊髄の異常アンドロゲン受容体(AR)蛋白の発現が減少し,表現型の改善が得られた(名古屋大学との共同研究).
|