研究領域 | シナプス・ニューロサーキットパソロジーの創成 |
研究課題/領域番号 |
23110520
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
深田 優子 生理学研究所, 細胞器官研究系, 准教授 (40416186)
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キーワード | てんかん / シナプス / 神経回路 / 神経科学 |
研究概要 |
"てんかん"は神経細胞および神経回路の異常な興奮によりおこる。しかし、病態解明は進んでおらず、根本的な治療法に至っているものは多くない。申請者はこれまでに、家族性側頭葉てんかんの原因遺伝子産物である分泌蛋白質LGI1が膜蛋白質ADAM22/ADAM23のリガンドとして機能し、AMPA受容体機能を促進することを見出した。また、LGI1機能欠損(KO)マウスでは海馬シナプスのAMPA受容体機能が低下し、致死性てんかんが起こることを見出した。しかし、「LGI1機能欠損によるAMPA受容体機能の低下が、なぜ脳の過剰興奮である"てんかん"を引き起こすか」については謎であり、シナプスおよび神経回路レベルの病態解明が必要不可欠である。本研究では1)LGI1遺伝子変異とシナプス伝達異常の関連性と、2)てんかん発症における海馬シナプス・神経回路の分子病態を解明することを目的とする。 1)LGI1遺伝子変異とシナプス伝達異常の関連性解明 家族性側頭葉てんかん家系で報告されている21種類のLGI1ミスセンス変異体を単離し、それらを分泌型、分泌不全型変異体に分類した。次に分泌型LGI1変異体と分泌不全型LGI1変異体を発現する変異マウスを樹立しこれらのマウスが致死性てんかんを引き起こすことを見出した。すなわち、ヒトのてんかんモデルマウスを作出した。 2)てんかん発症における海馬シナプス・神経回路分子病態の解明 脳の神経細胞"種"特異的にLGI1を発現させ、LGI1KOマウスのてんかんが救済されるか否かによりてんかん発症に関わる神経回路を同定する。今年度はLGI1海馬歯状回特異的にLGI1を発現するマウスを作成し、このマウスがてんかん表現型を救済するか検討している。 さらに、イヌのLGI1の類縁蛋白質LGI2が良性焦点てんかんの原因遺伝子であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
私どもの先行実験(野生型LGI1を発現するtransgenic mouse作成)で、変異体マウス作成に必要な実験条件が既に確立していたため。
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今後の研究の推進方策 |
1)作成したLGI1変異マウスの脳内で、LGI1複合体の存在様式、LGI1変異体の分布、海馬シナプスのAMPA受容体機能を調べ、その病態機構を明らかにする(分子レベルでの解析)。 2)引き続きCA3野、苔状細胞、抑制制神経細胞特異的にLGI1を発現するマウスを樹立し、てんかん表現型をレスキューするか否かを遺伝学的に解析する(回路レベルでの解析)。
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