研究領域 | シナプス・ニューロサーキットパソロジーの創成 |
研究課題/領域番号 |
23110528
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
永井 義隆 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・疾病研究第四部, 室長 (60335354)
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キーワード | 神経科学 / 蛋白質 / 脳神経疾患 / 遺伝子 / 神経機能障害 / 神経変性疾患 / ポリグルタミン病 / シナプス |
研究概要 |
アルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン(PolyQ)病など多くの神経変性疾患において、それぞれ異なる蛋白質がミスフォールディング・凝集を生じ、その結果細胞レベル・個体レベルで可逆性の神経機能障害を来たして、神経症状を発症すると考えられている。本研究では、疾患モデルショウジョウバエを用いた遺伝学的スクリーニング、さらに2光子レーザー顕微鏡を用いたin vivoイメージングを用いて、シナプス機能異常が関わる神経機能障害の分子メカニズムを解明することを目的として、以下の研究を行った。 1)PolyQ病ショウジョウバエを用いた遺伝学的スクリーニングによる神経機能障害関連遺伝子の同定:PolyQ病モデルショウジョウバエと染色体部分欠失を持つショウジョウバエ変異体ライブラリーとの交配による遺伝学的スクリーニングを行い、遺伝子欠損により寿命短縮が軽減する神経機能障害に関わるシナプス関連遺伝子を複数同定した。 2)in vivoイメージング技術を用いたPolyQ病マウスのシナプス機能異常の解明:まず、PolyQ病モデルマウスの固定脳切片を用いて免疫組織化学的解析を行い、神経機能障害が発現する8週齢頃より海馬CA1錐体神経細胞におけるスパインの密度が低下することを明らかにした。そして、シナプスの形態・機能のin vivoイメージング解析を目的として、2光子レーザー顕微鏡を用いたThy1-YFP発現マウスのシナプス解析実験系を立ち上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PolyQ病ショウジョウバエを用いた遺伝学的スクリーニングに関しては、神経機能障害に関わる複数のシナプス関連遺伝子を同定した。PolyQ病マウスのシナプスについてのin vivoイメージング解析に関しては、固定脳切片を用いた免疫組織化学的解析により海馬CA1錐体神経細胞のスパイン密度が8週齢頃より低下することを明らかにし、そして、in vivoイメージング解析のための2光子レーザー顕微鏡を用いたシナプス解析実験系を立ち上げた。以上のことから、全体的に当初の研究計画がおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
PolyQ病ショウジョウバエを用いた遺伝学的スクリーニングにより同定したシナプス関連遺伝子群に関しては、PolyQ病だけでなくアルツハイマー病、パーキンソン病など他の神経変性疾患モデルショウジョウバエにおける神経機能障害に対する影響を検証し、様々な神経変性疾患に共通するシナプス機能異常メカニズムを解明する。また、前年度に実験系を立ち上げた2光子レーザー顕微鏡を用いて、PolyQ病モデルマウスのシナプス形態・機能についてin vivoイメージング解析を行い、神経機能障害におけるシナプス機能異常を解明する。
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