研究領域 | シナプス・ニューロサーキットパソロジーの創成 |
研究課題/領域番号 |
23110530
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 知之 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90372367)
|
キーワード | シナプス / 知的障害 / 自閉症 / シナプスオーガナイザー |
研究概要 |
① 知的障害・自閉症の原因遺伝子産物Interleukin-1 receptor accessory protein-like 1(IL1RAPL1)の細胞外ドメインは神経細胞膜上のリガンドに結合し、シナプス前終末誘導のシグナルを入れるのに十分であることが示されていた。IL1RAPL1の細胞外ドメインをベイトとしたアフィニティークロマトグラフィーによって、受容体型チロシンキナーゼ(PTP)δを同定した。PTPδはIL1RAPL1によるシナプス前終末の誘導に不可欠なリガンドであることが明らかとなった。PTPδとIL1RAPL1によるトランスシナプティック複合体は双方向性に興奮シナプスを誘導することを明らかにした。② IL1RAPL1の細胞内ドメインをベイトとしたアフィニティークロマトグラフィーにより、約10種類のタンパク質を同定した。これらのタンパク質の中には自閉症や知的障害に関連したタンパク質が含まれていた。更に、一部の結合タンパク質に関しては、結合に関与するドメインを同定した。③ IL1RAPL1欠損マウスにおいて興奮性シナプス構造であるスパインの減少の認められる脳領域を同定した。また、IL1RAPL1欠損マウスの行動バッテリーテストを行った。知的障害、自閉症の症状に関連した学習能力及び社会性に関連する行動テストを行っている。④ Cre組換え酵素依存的にIL1RAPL1遺伝子を欠損するflox-IL1RAPL1マウス系統を樹立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りIL1RAPL1のリガンドを同定し、細胞内領域の結合タンパク群を同定することができた。一方で、IL1RAPL1リガンドのPTPδが中枢シナプス形成の鍵分子であることがわかり、この分子の解析を急遽行ったため、当初の予定に一部遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、IL1RAPL1―PTPδのトランスシナプティック複合体がシナプス前終末・後終末を誘導するメカニズムを明らかにする。また、IL1RAPL1欠損マウスの組織学的解析及び行動学的解析を進め、IL1RAPL1―PTPδ複合体の機能の破綻が知的障害・自閉症を引き起こす機構を明らかにする。
|