重合性GTPaseであるセプチン(SEPT1-14)はニューロンやグリアの細胞骨格の構成要素である。優性変異型SEPT9による家族性ニューロパシー(KuhlenbaumerらNat Genet 2005)、統合失調症や双極性障害におけるSEPT5/6/11の増加(PenningtonらMol Psychiatry 2008)、ParkinによるSEPT4とSEPT5のユビキチン化などが報告されてきたが(ZhangらPNAS 2001など)、いずれも病態生理学的意義は不明である。シナプス病態班員としての研究期間を通じて以下の進捗があった。 パーキンソン病の病態モデルとして「Parkinの変異で分解を免れたSEPT4などの基質の蓄積が神経を障害する」仮説が優勢である。そこで脳選択的SEPT4過剰発現マウスを作製して検証したが、軽度の自発活動量低下傾向以外に行動学的異常はなく、凝集体も含めた病理変化もなく、上記仮説の反証となった(in revision)。 黒質-線条体ドーパミン伝達が減弱するSEPT4欠損マウス(猪原、木下らNeuron 2007)より重篤な病態を期待して、必須サブユニットを脳の一部で欠損するマウスを作製したところ、パーキンソン病末期に出現するアミロイド小体に類似した微小な凝集体が多発した。凝集体は幼若マウスにおいて既に多発しており、ほぼ全てのセプチンを含み、細胞質成分を巻き込んだ独特の形状であった。中間径線維や隔離膜で包囲されていなかったことから、アグリソームとして封入されていないことがわかった。多数の微小凝集体が残留する原因として、凝集蛋白質の輸送、アグリソームへの集積、オートファジーによる分解系からエスケープしている可能性を考え、これらパスウェイの既知分子を解析したところ、特定の蛋白質が著減していることがわかった(in preparation)。
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