神経軸索の変性現象は、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患において認められ、軸索変性を適切に制御することにより、神経変性疾患による神経症状の進行を止めることができることが示唆されているが、そのメカニズムについてはほとんどわかっていない。本研究では、我々が明らかにしてきた軸索変性誘導シグナルとゲノム高次構造の変容による自己破壊プログラムというふたつの観点からアプローチを試み、軸索変性現象を形作る分子メカニズムの全体像を捉え、効果的な作用点を探る戦略を進めている。具体的には、我々の構築したin vitroのアッセイ系を用いて、外因および内因による軸索変性の分子メカニズムの解析を行っている。特にグリア系細胞に発現するMAG、Nogo、RGMが軸索変性を惹起することを見いだしており、これらの因子がどのような受容体および細胞内シグナルによって軸索変性を誘導するかを解析しており、予備的な結果をすでに得ている。また軸索変性時におけるゲノムの転写構造の解析を行う目的で、cohesinのコンディショナルノックアウトマウスを作成しており、そのdevelopmental stageにおける形態的な異常を解析している。これらの研究を通じて、神経変性疾患における神経軸索の変性現象のメカニズムを明らかにし、軸索変性を抑制する治療法のfeasibility studyを行うことを本研究の到達目標とする。
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