公募研究
本研究は大環状π共役系配位子錯体を構成成分とするπ-d系の開発と有機結晶界面の接触型ドーピングによる機能開拓を目的としている。24年度は、電子相関効果が弱まっていることが示唆されているπ-d系として軸配位型フタロシアニンの一次元導電体であるエタノールが配位したアルカリ金属部分酸化塩の作製を引き続き行った。one-pot電解法でFe系のNa塩の作製に成功し、またFeIIの塩を出発原料として電解することで、K塩の作製にも成功したが、磁気物性および磁気輸送特性の測定に適したサイズの結晶の作製には至っていない。π-d系としてより大きな磁気モーメントが導入されたCrIIIの系について一次元部分酸化塩の作製に成功し、電気物性、磁気物性、磁気輸送特性を測定した。Fe系とは異なり磁気異方性は小さいが、電荷不均化はFe系と同程度であり、ある程度の大きさの負の磁気抵抗も観測されている。また、他の大環状π共役系配位子として、ポルフィリン系の研究も進め、H2(tmp)およびH2(tpp)を電子供与体成分とする電荷移動錯体の作製を行い、HOMOとなりうる2つの分子軌道があるが、錯体中の分子間の重なり積分の評価から、電荷移動相互作用には両方の軌道が関与していることが見出された。中心金属の導入と軸配位型錯体の作製にも成功し、電解酸化によりラジカル結晶が得られることを見出している。接触型ドーピングについては、Mott絶縁体であるET-F2TCNQ錯体結晶にTTFを接触させることで界面が高伝導化することを見出している。ここで注目したいのは両結晶間で成分交換が起きて生じるTTF-F2TCNQも絶縁体であることである。つまり、ここでの高伝導化はTTFからET-F2TCNQに電荷注入が起こってMott絶縁状態が融解しており、接触型ドーピングが電子状態を制御する手法として有効であることを示している。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件) 学会発表 (23件)
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