研究領域 | 分子自由度が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
23110703
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
芥川 智行 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (60271631)
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キーワード | 分子性結晶 / 強誘電体 / 分子モーター / 超分子 / 分子機械 / 分子磁性 / 金属錯体 |
研究概要 |
分子性結晶内に、分子の揺らぎや回転の自由度を導入したシステムは、結晶格子の柔らかさを利用した新規な物性開拓の場を提供する。本研究では、分子回転の自由度に着目した強誘電体に関して、強誘電体物性の精密制御を目的として研究を進めた。結晶中の対アニオンは、結晶内の超分子ローターカチオン構造の分子配列を決定すると同時に、結晶中の回転空間を支配する。強誘電性の発現が可能な(m-fluoroanilinium)(dibenzo[18]crown-6)超分子カチオン構造に着目し、S=1/2スピンを有する[Ni(dmit)_2]アニオンから、サイズの小さな[Ni(mnt)_2]に変化させた時のカチオン-アニオン配列と結晶中の分子配列様式についての検討を行った。また、カチオン構造の分子回転に必要な結晶空間に関する検討と結晶格子の次元性と柔軟性に関する評価を試み、新規な分子設計指針を提出した。さらに、(o-aminoanilinium^+)-(crown ethers)-[PMo_<12>O_<40>]結晶に関する検討を行い、結晶構造と結晶中の分子運動に関する系統的な評価を試みた。結果、o-aminoaniliniumカチオンの互いに連動した協奏的な運動モードの存在を、結晶構造・誘電率の温度変化・回転ポテンシャルエネルギー計算から結論づけた。すなわち、隣接する、o-aminoaniliniumカチオンは互いのパイ平面を連動させて協奏的な運動を行うことで、誘電率の温度-周波数依存性に大きな応答をもたらす。以上の研究成果は、Bull. Chem. Soc. Jpnのselected paperに採用された。また、Adamantane carboxylateを配位子とするCu(II)二核錯体に着目し、結晶中の多彩な分子運動と巨大誘電応答の相関について、結晶構造・誘電率・固体NMR・熱重量分析などの手法を用いて評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、東北大学への着任後、東日本大震災により研究設備・研究進捗状況に大きな影響が出た。地震による復旧作業などを進める中、当初の研究計画の7~8割方進めることができ、おおむね順調に研究が進展している。地震後1年を経過したが、未だに装置の不調などの地震による後遺症が見られるが、研究内容とその段取りをうまく調整することで、予定通り研究が進展すると予測でき十分な研究成果の達成が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災の影響が大きかった23年度に対して、残り1年の研究期間である24年度は、当初の予定通り研究計画を実施することが可能であり、本新学術領域研究の推進に十二分に貢献できる。特に、超分子カチオン型の有機強誘電体と誘電応答システムの実現に関しては、当初の予定以上の研究の進展が得られている。物質開発をさらに進めることで、当初の計画以上の研究成果の達成が可能で有る。
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