• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実績報告書

強相関電子系におけるスピン揺らぎと異方的散乱の制御

公募研究

研究領域分子自由度が拓く新物質科学
研究課題/領域番号 23110704
研究機関広島工業大学

研究代表者

安塚 周磨  広島工業大学, 工学部, 准教授 (80382034)

キーワードスピン揺らぎ / 異方的超伝導体 / フェルミ面 / 上部臨界磁場 / 電子相関
研究概要

分子性導体において,K-(ET)_2Cu(CN)_3やEtMe_3Sb[Pd(dmit)_2]_2といった二次元三角格子構造をもつモット絶縁体が合成され,スピンフラストレーションに由来する興味深い現象が数多く見出されてきた.これらの系では,強い磁気フラストレーションのために基底状態としてスピン液体状態が実現する.また,K-(ET)_2Cu(CN)_3やEtMe_3Sb[Pd(dmit)_2]_2は圧力下で超伝導を示し,局在磁性系に加え,遍歴・強相関電子系におけるスピンフラストレーションと超伝導の関係も興味深い.本研究では,二次元三角格子構造を有する遍歴・強相関電子系(特に,スピン揺らぎに由来する非BCS型有機超伝導体)として,K-(ET)_2Cu(NCS)_2およびβ-(BDA-TTP)_2SbF_6に注目し,これらの系に対して磁気抵抗の磁場方位異方性を超伝導状態からスピン揺らぎが残っていると考えられる常伝導状態まで広い磁場・温度領域で調べることを目的とした.
(1)β-(BDA-TTP)_2SbF_6における上部臨界磁場の面内異方性:
上記物質の超伝導ギャップ構造は未解決である.本研究で上部臨界磁場の面内異方性を調べたところ,[010]方向および[001]方向よりも[011]方向に磁場を印加した時に上部臨界磁場が僅かに小さくなることを見出した.この結果は,この系の超伝導ギャップ構造がd_<xy>よりもd_<x2-y2>対称性であることを示唆する.(2)β-(BDA-TTP)_2SbF_6のフェルミ面:
β-(BDA-TTP)_2SbF_6の上部臨界磁場の面内異方性を検討するためには,フェルミ面の面内異方性を確認しておくことが重要と考え,14.8Tでの磁気抵抗測定を行ない,第一原理計算との比較を行なった.実験から得られたフェルミ面の異方性が理論から予測されるそれと一致することを確認した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的である,スピン揺らぎに起因する物性評価を行なうためには,上部臨界磁場の面内異方性およびフェルミ面の異方性を実験的に決定することが必須である.H23年度は,K-(ET)_2Cu(NCS)_2およびβ-(BDA-TTP)_2SbF_6に対して,上部臨界磁場およびフェルミ面の異方性をそれぞれ決定した.これらを基礎データとして,H24年度はスピン揺らぎと磁気抵抗の面内異方性との相関を検討する.

今後の研究の推進方策

K-(ET)_2Cu(NCS)_2については,上部臨界磁場の面内異方性から超伝導ギャップ構造がほぼ確定しつつある。今後は,非線形電気伝導領域まで測定範囲を拡張し,スピン揺らぎに由来する異方的ギャップ構造とボルテックスダイナミクスの面内異方性の相関の有無を実験的に調べる.
β-(BDA-TTP)_2SbF_6については,フェルミ面トポロジーが実験的に明らかになったことから,磁気抵抗の面内異方性として,超伝導状態だけでなく,スピン揺らぎが残存すると考えられる常伝導状態まで磁気抵抗測定を行なう.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Small Fermi Pocket in Layered Organic Superconductor β-(BDA-TTP)_2SbF_62012

    • 著者名/発表者名
      S.Yasuzuka
    • 雑誌名

      J.Phys.Soc.Jpn.

      巻: 81 ページ: 035006/1-2

    • DOI

      10.1143/jpsj.81.035006

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Backflow-Induced Asymmetric Annihilation of Nematic Disclinations under Strong Condition2012

    • 著者名/発表者名
      T.Yanagimachi
    • 雑誌名

      J.Phys.Soc.Jpn.

      巻: 81 ページ: 034601/1-4

    • DOI

      10.1143/jpsj.81.034601

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Experimental assessment of quasi-binary picture of thermotropics : Induced smectic A phase in 7CB-n-heptane system2011

    • 著者名/発表者名
      Y.Yamaoka
    • 雑誌名

      J.Chem.Phys.

      巻: 135 ページ: 2693-2698

    • DOI

      10.1063/1.3615491

    • 査読あり
  • [学会発表] κ-(ET)_2Cu(NCS)_2の渦糸状態における非線形電流-電圧特性2012

    • 著者名/発表者名
      安塚周磨
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      西宮市・関西学院大学
    • 年月日
      2012-03-27
  • [学会発表] κ-(ET)_2Cu(NCS)_2における上部臨界磁場の面内異方性2012

    • 著者名/発表者名
      安塚周磨
    • 学会等名
      「分子自由度が拓く新物質科学」第6回領域会議
    • 発表場所
      宮城県仙台市
    • 年月日
      2012-01-06
  • [学会発表] Low-field angular-dependent magnetoresistance oscillation in β-(BDA-TTP)_2SbF_62011

    • 著者名/発表者名
      S.Yasuzuka
    • 学会等名
      International Symposium on Crystalline Organic Metals, Superconductors, and Ferromagnets 2011 (ISCOM 2011)
    • 発表場所
      Poland
    • 年月日
      2011-09-28

URL: 

公開日: 2013-06-26  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi