研究領域 | 分子自由度が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
23110710
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
笹川 崇男 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 准教授 (30332597)
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キーワード | 新分子物質 / ナノ素材 / 単結晶 / 第一原理計算 / 光学特性 |
研究概要 |
石油から抽出できる炭素系ナノテク新素材のダイヤ分子について、ナノサイズ・立体形状・対称性に着目しながら、ダイヤ分子の凝集相に特有で新奇な物性と電子機能を、固体物理化学的な実験と理論計算の連携によって開拓することに取り組んだ。 4つまでのダイヤ・ケージ骨格をもつダイヤ分子について大型純良単結晶試料を育成し、それらを用いた光学特性の測定を行った。吸光スペクトルの測定を行ったところ、230nmよりも短い波長領域でわずかに光吸収のあることがわかった。実験に先立って行った第一原理計算から、ダイヤ分子の結晶相では、バルクのダイヤモンドでは間接遷移型であったバンド構造が直接遷移型に変化し、バンドギャップの値も6.3eV~6.8eVをもつことを既に報告しているが、今回の実験結果はその予測と概ね一致するものであった。更に、光吸収による電子励起により、吸収波長よりも大きくレッドシフトした300nm付近で紫外発光(蛍光)することを見出した。光源の種類(ハロゲンランプ、レーザー)によらずに蛍光が観察されること、ダイヤ・ケージの数には蛍光特性が大きく依存しないことなどを確認した。 フォトルミネッセンスが確認できたことにより、その延長線上にあるLEDなどのエレクトロルミネッセンスの実現に向けた研究にも弾みがつくことが期待される。ダイヤ分子は、無機EL材料と異なって高温での成膜プロセスを必要としないので、プラスティックなどのフレキシブルな基板上へのデバイス作製にも期待がもてる。また、既存の有機EL材料と異なって反応性の高い炭素2重結合などを含まないため、湿気や酸素で劣化する心配がない。つまり、ダイヤ分子を発光層に用いることで、無機材料と有機材料の両方の欠点を克服したフレキシブルで高寿命の発光素子を作れる可能性があるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究成果を論文として専門誌に掲載し、その内容について新聞報道もなされるなど(2011年12月6日・日経産業新聞(10面))、成果の公表も順調に行えたことから。
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今後の研究の推進方策 |
純粋なダイヤ分子の結晶状態を対象として、素材そのものの持つ物性を多角的に検討することについては一定の研究成果をあげることができた。そこで今後は、分子自由度に着目したダイヤ分子の化学修飾や自己組織化などによる機能設計とその実証に関して重点的に取り組むこととする。
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