研究領域 | 分子自由度が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
23110711
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
石田 尚行 電気通信大学, 大学院・情報理工学研究科, 教授 (00232306)
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キーワード | 分子性磁性体 / 集積型金属錯体 / 超分子科学 / 単分子磁石 / 高スピン分子 / 相転移 |
研究概要 |
我々は合成開発寄りの材料科学研究を進めており、有機材料/無機材料の区別なく広範な元素、分子群を取り扱ってきた。π-dやd-fの組み合わせの中から、現在、新しい電子機能を目指した新材料開発を推進しつつある。電導性、磁性、誘電性、光物性を目指した材料の設計は、「フロンティア軌道設計」と言い換えることができる。本課題で「分子自由度」の意味するものは、スピンの持つ自由度の他に、様々なフロンティア軌道を組み合せられるという設計性自由度である。本課題では、有機結晶の柔軟さと相転移挙動、つまり相の自由度も取り入れた。 1. 反磁性-常磁性転移を示すビラジカル系:基底三重項ビラジカル(bpbn)の一連化合物群が、逐次構造相転移を示し、反磁性からS=1/2常磁性、続いてS=1常磁性となることを明らかにしている。この一つの誘導体で、ビラジカルであるにも関わらず幅広い温度領域でS=1/2常磁性を示すものを見いだした。 2. テトラピリジルメタンを用いたスピンクロスオーバー物質の探索:鉄(II)イオンにテトラピリジルメタンが配位した物質群で、高い頻度で高スピン/低スピンを熱/光でスイッチするものを見いだした。 3. 4f-3d交換相互作用に見られる化学的傾向:錯体[LnCu_2]の系において、Lnが重希土類の場合は4f-3d間に強磁性的カップリングが見られた。しかも、原子番号Zに対してプロットすると、明瞭なZ依存性を見せた。 4. 4f-2p交換相互作用:有機ラジカル配位の希土類錯体において、4f-2p交換相互作用にもZ依存性が示された。さらに、構造パラメーターと磁気カップリング定数との間に良好な相関を描くことができた。この相互作用は、希土類磁性材料の中では非常に大きい部類に属する。現在、中性子散乱実験へ研究を展開させつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁化率の変化を伴う相転移物質の開発を主眼におき、2pスピン系や3dスピン系では順調に合成開発が進められている。さらに発展的課題として、磁気カップリングの元素依存性や構造依存性について重要な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
磁化率の変化を伴う相転移物質の開発に対して、3d-2pもしくは4f-2pヘテロスピン系の物質開発がやや計画より遅れている。研究課題のメインストリームを補強しつつ、これまでに得られた興味ある派生的研究も同時に進行させる必要がある。
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