前年度までの成果を基盤として、エチレンジオキシ基を含むテトラセレナフルバレン誘導体と、モノフルオロメチル基を有する各種テトラチアフルバレン誘導体の2つの物質系について研究を行った。エチレンジオキシ基を含む系では、ドナー分子をエチレンジオキシテトラセレナフルバレンに固定し、対アニオンとしては八面体型の1価アニオンであるヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート等を中心に用いて、定電流電気分解による単結晶作成を行った。これらの系では多形が得られる場合が多かったことから、電解に用いるアルコール系溶媒の炭素数を変化させながら、多形の出現確率と結晶品質の変化との関連について詳しく検討を行い、対応する硫黄誘導体の系で巨大光応答性が報告されているβ塩と同型の分子配列を有する結晶を、選択的に得ることに成功した。モノフルオロメチル基を含むユニットである4-フルオロメチル-5-メチル-1、3-ジチオール-2-チオンを用いた新規ドナー系の開発では、まず中性ドナー分子合成におけるカップリング反応についての詳細な条件検討を行い、収率の底上げを図った。特に、4、5-ジメチル-1、3-ジチオール-2-チオンとのカップリング反応で得られるドナー分子であるフルオロメチル(トリメチル)テトラチアフルバレンについては、最終的に50mg程度の純粋な中性ドナー分子を得ることに成功した。試験的に電解酸化によるカチオンラジカル塩の単結晶育成を行ったところ、対アニオンとしてヘキサフルオロホスフェートを用いた場合に、少数のロッド状の結晶が得られた。
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