研究領域 | 動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成 |
研究課題/領域番号 |
23111501
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
橋本 茂 北海道大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (50311303)
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キーワード | 乳腺組織 / 乳腺幹細胞 / 細胞運動 / EMT / Arf6 / AMAP1 / GEP100 / 癌転移 |
研究概要 |
これまでに、低分子量G蛋白質Arf6を中心としたGEP100-Arf6-AMAP1経路が乳癌細胞の浸潤・転移形質獲得に根幹的役割を果たしていることを明らかにしてきた。その際、Arf6GEFであるGEP100がそのPHドメインを介して多様な運動性・浸潤性の誘導に関与する可能性が示唆された。当該研究期間において、血管新生における集団的細胞運動の誘導と管腔形成に着目し、GEP100-Arf6-AMAP1経路が、VEGFレセプターシグナル伝達により活性化され、血管内皮細胞のin vitro 2D培養wound-healing、3D培養における管腔形成及び、マウス個体を用いたin vivoの血管新生に必須であることを論文発表した。さらに、マウスの正常乳腺組織において、妊娠に伴って、GEP100-Arf6-AMAP1経路を構成する分子群の蛋白質発現量が増加し、授乳期まで継続し、退縮期に入るとそれらの発現が減弱することを見出した。これらの知見は、GEP100-Arf6-AMAP1経路が乳腺を含む様々な正常組織形成における細胞運動性の制御に関与すると仮定した我々の作業仮説を指示するものである。当該研究期間において、作製を終了した乳腺特異的GEP100遺伝子欠損マウス(Wap-Cre/GEP100-KO)を用いた乳腺組織形成におけるGEP100の機能解析を進めている。さらに、上皮由来細胞を3D培養することによって見られる極性を持った管腔形成、acina formation(腺房形成)を指標としたin vitro乳腺リモデリング系や、マウスの乳腺組織から分離した細胞群を、乳腺除去したマウスに移植し、妊娠誘導によって乳腺組織の再構築が惹起される乳腺幹細胞移植実験系を用いたGEP100-Arf6-AMAP1経路の関与の検討も順次進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
妊娠に伴う乳腺組織リモデリングのプロセスにGEP100-Arf6-AMAP1経路が関与することを強く支持する結果に次いで、研究実施計画に沿った機能解析に関する結果は順次得られているが、organoidsや乳腺幹細胞移植系を用いた乳腺リモデリング過程のライブイメージングに必要な実験系の構築が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、乳腺特異的GEP100遺伝子欠損マウスを用いたin vivoでの解析を重点的に進め、乳腺リモデリングにGEP100が関与すること、引き続いて、GEP100-Arf6-AMAP1経路が関与することを確定し、乳癌モデルマウスと比較することによって、in vitroの実験から構築した乳腺リモデリングにおけるGEP100-Arf6-AMAP1経路の活性化・不活性化の制御機構のモデルの妥当性を検証し、どのような異常によって癌の浸潤・転移形質獲得へと繋がるのかその分子機序を解明することを優先する。organoidsや乳腺幹細胞移植系を用いた乳腺リモデリング過程のライブイメージングは優先順位を下げて、当該領域内の専門家とdiscussionしながら確実に進めて行く。
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