研究領域 | 動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成 |
研究課題/領域番号 |
23111506
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
澤井 哲 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (20500367)
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キーワード | 振動 / cAMP / 走化性 / リズム / 粘菌 / 興奮性 / ライブセルイメージング / 細胞移動 |
研究概要 |
細胞性粘菌の細胞塊では、細胞運動をガイドする誘因物質cAMPの波が形成され、それに従って細胞が動くことで波が壊れ、波が壊れることで細胞が再配置され、新たな波パターンが構築されている。この形態形成運動の仕組みを生細胞イメージングから解き明かす。この系は、場と動きが相互に依存する形態形成運動に共通して予見される発生学、生物物理学上の特性の解明に加えて、進化学的に重要な視点がある。初年度は、まず波の発生について我々のcAMP可視化実験からあきらかになってきたことと、これまでの歴史的知見をまとめ、査読付きのレビュー論文として報告した。5分周期のcAMPの起源が理解できるものの、集合期後半から観察される3分周期の波とその起源の謎が改めてハイライトされた。この3分周期の波の発生と細胞運動との関連を解析したところ、周期の変化と細胞運動が活発になるタイミングが極めて一致していることをつきとめた。また、集合と解離を繰り返すことで知られる接着因子tgrの欠損株に注目して調べたところ、この3分周期の波の発生が十分に進行しないこと、これによって波が破壊され細胞集団が解離していることを明らかにした。これらのことを踏まえると、細胞集団の維持と運動性に波の周期性が極めて重要な役割を果たしていることが強く示唆されている。この周期性の変化がおこらないような薬剤処理を検討した結果、同様の作用をもっている化合物も見出している。薬剤下における遺伝子発現を定量PCRで解析した結果、cAMPシグナリングに必要な因子の発現が遅れかつ持続していることをつきとめており、運動との関係などの解析を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞同士を任意に配置して実験するために、電動のマニピュレータの導入を年度当初に予定していたが、震災の影響で予算が確定しなかったことと、人件費確保のために、実験計画をみなおし、それ以外の計画を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
他予算で導入した440nmレーザーによって、多細胞レベルにおけるFRET観察が可能になってきた。この技術的なメリットを活かせるよう、技術面における実験計画を多少変更する。また、微小流路系について初年度にだいぶ試行錯誤をおこなったが、これについてまだ決定的な系が確率していない。これについては、日進月歩で向上がみられていることから、次年度の早い段階でデータがだせるところまで進められるように注意したい。
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