公募研究
粘菌細胞の集合は、静的なcAMP勾配ではなく、cAMPの動的な進行波への誘引によって引き起こされている。細胞が受ける空間的な勾配は常に一定ではなく、波が細胞を通過するごとに勾配の方向が反転してしまう。空間勾配を検知するだけでは、繰り返し反転する場に対して細胞は行ったり来たりしてしまい、一方向に進むことが難しいはずと考えられている。そこで、微小流路を用いて進行波刺激を再現する系を構築し、進行波の時空間スケールを任意に変えるなどして、進行波に対する細胞応答を詳細に解析することが可能とした。これを用いて、異なる進行速度のcAMP波に対する細胞応答を観察したところ、細胞の移動方向は波の速度に依存して変わることがわかった。刺激の通過が速い(2分未満)と細胞は空間勾配を認識できずに止まり、逆に遅い(10分以上)と、波の通過に合わせて細胞もUターンし波を追いかける。一方で、細胞は3分から10分で通過するcAMP波に対してのみ、波がやってくる方向へ一方向移動した。つまり、細胞は刺激時間が細胞応答の時間スケールと一致する適切な範囲でのみ、刺激のやってくる方向への一方向運動が可能だとわかった。さらに理論モデルを構築して調べたところ、進行波に向かう一方向運動を説明するには、細胞は空間一様な刺激に対して、刺激強度によって応答強度が決まる持続的な応答ではなく、適応的な応答をすることが必要であるとわかった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proc. Natl. Acad. Sci. USA
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