研究実績の概要 |
組織・器官形成時の細胞形態変化は、細胞骨格再編成だけでなく、細胞間や基質との接着性・mRNA翻訳・膜動態などの多面的な細胞特性の協調的変化を伴う。一方、細胞形態変化を制御する細胞外シグナルも多様である。本研究では組織・器官形成のモデル系としてC. elegans表皮細胞によるrayおよび陰門という二つの器官の形成過程に着目し、細胞集団の配置・配列制御時の細胞形態変化に関わる細胞機能と細胞外シグナルについて解析した。 陰門形成に関わる前駆表皮細胞VPCで膜貫通型セマフォリンSMP-1が示す細胞自律的な機能の実態を解明した。特に、セマフォリン経由の逆シグナルの存在、セマフォリンとプレキシンのcis-相互作用の可能性に着目した。 細胞内領域の変異型SMP-1の作成と、IR-LEGOによる単一VPCでの遺伝子発現法を活用して、プレキシンによる順シグナルが表皮細胞の形態変化をもたらすが、膜貫通型セマフォリンはプレキシンとtransだけではなくcisにも相互作用してこれを活性化できることを明らかにした。 このcis相互作用が膜貫通型セマフォリンSMP-1の示す細胞自律性な作用を引き起こすと思われる。 また、ネトリン遺伝子unc-6、およびネトリン受容体遺伝子unc-5,unc-40/DCCの各変異体におけるrayの位置異常が、発生過程におけるRn子孫細胞の配列・配置異常に由来することを明らかにした。
|