研究領域 | 動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成 |
研究課題/領域番号 |
23111514
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三浦 岳 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10324617)
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キーワード | 肺 / 細胞集団運動 / FGF10 / 濃度勾配 |
研究概要 |
本年度は、肺上皮がFGF10の濃度勾配を感知して集団で移動するメカニズムの検証を行った。これまで、in vitroの系を用いて、単離した上皮周辺のゲルの変形によって運動メカニズムを推定していたが、実際のin vivoでの挙動の観察を行った。これまで、腎臓の上皮の類推かち、肺の上皮でも、枝の長軸方向にそった細胞全裂が起こることによって枝の伸長が起こるとされていたが、名古屋大学の宮田卓樹研究室でLyn-EGFPマウスを用いて肺の器官培養系での上皮の挙動を観察し、細胞分裂にはApical-Basal方向への運動以外は特定の方向性が見られないことがわかった。また、Cortactinのwhole mount免疫染色の結果から、生体内の状態でも上皮細胞がlamellipodiaを隣りの細胞の基底膜と細胞膜の間にのばしていることがわかった。これらの観察結果は、in vivoでもin vitroと同様、肺の上皮細胞が細胞間の結合を保ちつつbasal面でlamellipodiaを用いて集団的に移動している、という仮説を支持する。 また、FGF10の濃度勾配に肺の上皮がどのように反応するかを見るために、蛍光FGF10の作成を行った。現在のところ、EGFP融合FGF10タンパクを作成し、COS細胞で発現させたところ、狙った分子量のFGF10が高発現していることを確認した。また、このCOS細胞と肺の上皮細胞を共培養したところ、FGF10を発現しているCOS細胞に向かって肺の上皮細胞が動いていく様子が観察され、活性のあるFGF10が産生されていることが確認された。しかし、産生量が少なく、細胞外でのFGF10の分布はまだ確認できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した項目のうち、細胞運動に関する項目はほぼ順調に推移している。また、細胞外のシグナル因子の濃度勾配の形成に関しても、蛍光蛋白の作成が進みつつある。マイクロデバイスを用いた勾配形成系の開発が少し遅れているが、当初の設計とは異なるデザインのデバイスの動作チェックを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のうち、肺の上皮の運動様式に関しては、最初の仮説を支持する実験結果が集積しつつあるので、適宜論文にまとめる。外場の濃度勾配に関しては、活性があって、観測可能なFGF10蛋白の生成が成功し次第、拡散係数、取り込みダイナミクスの計測および、数理モデルとのパラメータフィッティングを行う予定である。
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